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準用規定を読みこなす

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

ある機械メーカーの本社の方々とオンラインで会議をしていたときのことです。

適用される環境法の一覧表を拝見したところ、「毒物及び劇物取締法」(毒劇法)の順守事項の項目が次のように書かれていました(読者のみなさん、読み解けますか?)。

「第十一条、第十二条第一項及び第三項、第十七条並びに第十八条の規定は、毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び第一項に規定する者以外の者であつて厚生労働省令で定める毒物又は劇物を業務上取り扱うものについて準用する。この場合において、同条第一項中「都道府県知事」とあるのは、「都道府県知事(第二十二条第五項に規定する者の業務上毒物又は劇物を取り扱う場所の所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合においては、市長又は区長)」と読み替えるものとする。」

これは、毒劇法21条5項の条文をそのままコピペしたものです。
本条が適用される事業者にとっては、たいへん重要な規定ですが、このままの状態で順守事項を理解し、運用できるとは到底思えません。

ご担当者に状況をお聞きしたところ、「これではわからないので、実際は何もしていない」とのことでした。

毒物や劇物を取り扱う事業者は多くいますが、違反事例も少なくありません。
このまま放置すべきではないでしょう。

一方、法令の基礎教育を受けないまま、企業で環境法の担当になった方にとって、上記のような条文を読みこなすというのは、なかなか難儀でもあるでしょう。

しかし、法令原文も日本語です(こんな当たり前のことを書かなくてはならないところに、法令原文の抱えるわかりづらさという課題が浮き彫りにされますが…)。条文の書きっぷりを頭に入れ、順を追って読んでいけば、誰でも理解することができます。

上記のような条文は、「準用規定」と言います。
「準用」とは、「ある事項についての規定を、他の別の事項についても同じように用いること」です(大島稔彦『法制執務ハンドブック』第一法規・1998年)。

上記の文章構造を図で示すと、次の図表のようになるでしょう(赤字は筆者が付けた注釈です)。

準用規定を読みこなす画像

法令原文は、正確を期するためにどうしても文章が長くなりがちで、わかりづらいものです。
そこで、法令原文を読むときは、まず、全体構造を頭に描くことです。

上記のように「Aの規定は、Bについて準用する。」(Aの規定をBについても同じように用いる)という全体構造が頭に入ると、条文の理解が一気に進むのではないでしょうか。

次にAとBの内容をそれぞれ読み解くことにしましょう。

Aで掲げている条文は、いずれも毒物劇物営業者と特定毒物研究者を規制するものです。例えば、11条では、「毒物又は劇物の取扱」として、次の4つを定めています。

・毒物・劇物の盗難・紛失防止
・毒物・劇物等の飛散・漏えい・流出等の防止
・毒物・劇物等を外で運搬する場合、飛散・漏えい・流出等の防止
・毒物・劇物等の容器として、飲食物の容器として通常使用される物の使用禁止

また、Aで掲げている条文のうち、18条の条文は、都道府県知事の権限に関する規定なので、Bが日ごろ順守しなければならない規制は、11条(毒物又は劇物の取扱)、12条1項、3項(毒物又は劇物の表示)、17条(事故の際の措置)の3つとなります。

次に、Bとは誰を指すのでしょうか。
条文は、「毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び第一項に規定する者以外の者であつて厚生労働省令で定める毒物又は劇物を業務上取り扱うもの」と書かれています。

まず、前半の「毒物劇物営業者、特定毒物研究者及び第一項に規定する者」のうち、「第一項に規定する者」とは、法22条1項の対象者となり、これは、シロアリ駆除業者など、届出が義務付けられている特定の取扱い業者を指します(毒劇法施行令41条参照)。

また、「厚生労働省令で定める毒物又は劇物を業務上取り扱うもの」とは、毒劇法施行規則(昭和26年厚生省令4号)18条の2にて、「法第22条第5項に規定する厚生労働省令で定める毒物及び劇物は、すべての毒物及び劇物とする。」と定められているので、届出が義務付けられていないすべての取扱い業者(非届出取扱い業者)となります。

なお、上記の図表の「注」は、第18条の立入検査等の規定を、非届出取扱い業者に準用する場合は、立入検査等を行う者として、都道府県知事だけでなく、市長又は区長が該当することもあることを定めているものとなります。

以上の解説を踏まえ、自社の法規制の一覧表に本規制内容を書くのであれば、例えば、次のようにまとめるとよいでしょう。

毒劇法の非届出取扱い業者の順守事項の書き方の例
(毒劇法21条5項)

対象者根拠条文順守事項
毒劇物の非届出取扱い業者 毒劇法22条5項 (11条) ・毒物・劇物の盗難・紛失防止
・毒物・劇物等の飛散・漏えい・流出等の防止
・毒物・劇物等を外で運搬する場合、飛散・漏えい・流出等の防止
・毒物・劇物等の容器として、飲食物の容器として通常使用される物の使用禁止
毒劇法22条5項(12条1項、3項) ・毒物・劇物の容器及び被包に、「医薬用外」の文字、毒物は赤地に白色で「毒物」の文字、劇物は白地に赤色で「劇物」の文字を表示
・毒物・劇物の貯蔵・陳列場所に、「医薬用外」の文字、毒物は「毒物」、劇物は「劇物」の文字を表示
毒劇法22条5項 (17条) ・毒物・劇物等が飛散・漏えい・流出等し、保健衛生上の危害が生ずるおそれがあるときは、直ちに保健所、警察署又は消防機関に届出、応急措置
・毒物・劇物が盗難・紛失したときは、直ちに警察署に届出

今回ご紹介した準用規定は、毒劇法の他にも、廃棄物処理法などにもあります。

どうしても身構えてしまうようなわかりづらさはあるものの、慣れれば恐れるほどではありません。ぜひチャレンジしてみてください。

参考文献
安達宏之『企業と環境法 ~対応方法と課題』(法律情報出版)
http://www.kankyobu.com/sp/book3.htm

(2021年05月)

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