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条例の規制を見落とさない

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 ある大手企業のグループ会社の工場でのできごとです。
 県の環境部門による立入調査によって、次から次に届出漏れの設備があることが判明しました。国の法律に基づく届出はほぼ行われていたのですが、条例に基づく届出が多数漏れていたのです。

 その工場は、ISO14001認証も受けており、法令順守の仕組みもあり、順守評価や内部監査も行っていましたが、長年にわたり、条例違反を見逃していました。
 しかも、その届出違反に関連した公害の苦情が行政に寄せられていたこともあり、法順守の体制の再構築について強く行政指導されることになりました。

 この事例のように、条例に基づく届出を漏らすという事態は、決して珍しいものではありません。今回は、条例の規制のポイントと対応のコツを解説しましょう。

 そもそも日本の環境法は、国の法律が整備される前に、地方自治体(都道府県と市町村)の条例の規制が先行してきました。
 1960年代頃の公害の時代も、その後の廃棄物の不法投棄・不適正処理が横行した時代も、地球温暖化問題が社会で広く共通認識を持つに至った最近の時代も、すべてそうです。

 自治体が環境対策を牽引し、続々と条例で新規制を整備してきました。
 その後、国が重い腰を上げて、新法や法改正により環境規制を定めていきます。ただし、しぶしぶ整備したためか(?)、国の規制の中身は条例よりも緩いものが多くありました。

 そうなると、すでに条例で規制を定める自治体は、国に新しい規制ができたからといって、自らの規制を廃止するとその地域ではかえって規制が緩くなってしまうので、取り下げるわけにもいきません。
 こうして、全国各地に条例による独自規制が乱立することとなりました。

 企業は、こうした事情の社会の中で、国の規制とともに、自治体の規制も順守しなければならないのです。
 そのためには、自社の事業所がある都道県と市町村が定めるそれぞれの環境条例の規制事項をしっかりと調べて、該当する場合は順守する仕組みを構築し、運用しなければなりません。

 環境条例の規制事項をしっかりと調べるコツは、当たり前ですが、まずは何よりもその条例の規制対象が何かをチェックすることです。
 次の図表は、国の騒音規制法と静岡県の生活環境保全条例における規制対象のリストの一部です。

騒音規制法と静岡県条例の規制対象の違い(一部)

対象施設国の騒音規制法静岡県条例
金属加工機械旋盤、ボール盤など※規制対象外すべて
空気圧縮機(コンプレッサー)・送風機原動機の定格出力7.5kW以上原動機の定格出力3.75kW以上
建設用資材製造機械アスファルトプラント混練機の混練重量が200kg以上すべて

 騒音規制法は、圧延機械や機械プレスなどの金属加工機械を規制対象としていますが、静岡県条例では、それだけでなく、旋盤やボール盤などの金属加工機械も規制対象としています。
 また、コンプレッサーを設置している工場は多いでしょうが、騒音規制法では、7.5kW以上の設備に規制対象を限定しています。これに対して静岡県条例では、規制対象をぐっと裾下げしており、その半分の3.75kW以上に規制対象を広げているのです。これは決して珍しい規制ではありません。

 静岡県条例では、騒音規制法の対象施設以外の施設に対しても、規制の網をかけているのです。対象施設の設置者は、県に対して届出を義務付けるとともに、規制基準の順守を義務付けています。

 このように、条例の規制は国の規制よりも厳しく、多種多様ですので、自社の対応状況が適切かどうかを継続的にチェックしていく取組みが求められるでしょう。

 ある企業では、ISO14001の内部監査のプロセスにおいて条例の順法システムを導入しています。

 具体的には、監査前の勉強会において、被監査部門に適用される条例規制を再確認するとともに、被監査部門の設備リストを入手し、適用の可否を事前検討していました。その上で被監査部門を訪問し、議論・検討していたのです。
 適用対象か否か不明な場合は、後日、被監査部門が自治体に確認する手順となっています。この企業は全国にいくつかの工場を持っていますが、これを数年間繰り返すことにより、条例の順法状況は格段に進歩したそうです。

 もちろん、こうした取組みを一過性のものにしてはいけません。前回述べたように、企業を取り巻く「法・業・人」は変わるからです。
 そこで、条例に改正がないかどうか、設備を新規に導入した場合に条例が適用されないかどうかなど、継続的にチェックしていくことも重要です。

参考文献
安達宏之『企業と環境法 ~対応方法と課題』(法律情報出版)
http://www.kankyobu.com/sp/book3.htm

(2019年9月)

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