行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)
今号では、下取り回収を可能とする第6の条件「(事業者自ら)収集運搬する」の詳細を検討します。
⑥(事業者自ら)収集運搬する
これも、前回の⑤「無償で引き取り」と同様に、非常に重要な要件です。
製造、あるいはその製品を販売している事業者自身が、不要品を回収することが前提となっています。そのため、「運送業者や宅配業者等が、新品の製品を納入した帰りに、それまで使われていた不要品をそのまま回収する」場合は、下取り回収通知の対象にはならないことがわかります。
下取り回収通知が最初に発出された昭和50年代と比べて、物流網が飛躍的に発達した現代日本において、⑥の「(製造や販売)事業者自らが廃棄物を収集運搬」するケースがどれくらいあるかという問題になります。
「商店街で細々と営業している個人経営の販売店が、自ら顧客のところまで商品を運搬」するような、少量かつ近隣への配達なら下取り回収通知の対象とできそうです。
あるいは、逆に、非常に専門的な機械設備のメーカーが、機械設備の設置に特殊な作業が必要なため、運送業者ではなく自社の車両で納品と設置に赴くような場合も、「事業者自ら収集運搬する」に合致する可能性があります。
宅配業者等の運送事業者に不要品を回収してもらえるならば、製造・販売事業者にとっては便利なことこの上ないことだと思いますが、下取り回収通知の内容を都合よく曲解したり、拡大解釈したりすると、廃棄物処理法違反にすぐ直結します。具体的には、廃棄物収集運搬業の許可無しに不要品を回収した運送事業者は「無許可営業」となり、その無許可業者に回収委託をした製造・販売事業者は「無許可業者への委託」となり、いずれも廃棄物処理法第25条の「5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金、またはこれの併科」の対象となります。
そのため、運送事業者に新品の配達のみならず、不要品の回収まで委託をしたい場合は、
1. 運送事業者に廃棄物収集運搬業の許可を取得してもらう
2. 環境大臣から廃棄物処理法に基づく広域認定その他で、事業スキームを特例的に認定してもらう
のいずれかしかありません。
ただし、
「1」の場合、回収する不要品が一般廃棄物に該当する場合は、新規で一般廃棄物収集運搬業の許可を取得することが非常に困難である以上、実現性はほとんどありません。
また、不要品が産業廃棄物に該当する場合であっても、「不要品の排出事業者が誰となるか」「不要品の発生場所をどうするか」という問題があります。このあたりの論点は、また次のメールマガジンで詳しく考察します。
「2」の場合、環境大臣の各種認定を取得するためには、「製造販売事業者」と「運送事業者」、そして「リサイクル事業者」の三者が組む必要がありますので、単に廃棄物の回収を図るためだけでは、認定の申請すらできません。
(2019年04月)