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下取り回収⑫

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今号で「下取り回収通知」の解説は最後となります。
 前号では、下取り回収通知の対象となるケースとならないケースの両方を解説しました。
 今回は、現代日本で最も多いと考えられる「不要品回収スキーム」が、はたして下取り回収通知の対象になるのかどうかを考察します。

ケース3(古いキャビネットの回収を運送業者が行うケース)
●キャビネットを納入した運送業者(産業廃棄物収集運搬業の許可なし)が、無償で回収と運搬を行う
●マニフェストの運用はしていない
●運送業者が回収したキャビネットは、事務機器販売店が排出事業者として、委託契約書とマニフェストを運用する

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 現代日本においては、製造・販売事業者自身が商品を自ら納品してくることはまれで、運送業者が納品及び下取り品の回収をしていることがほとんどです。下取り通知は、製造・販売事業者が自ら納品及び回収を実施することを前提とした解釈であるため、ケース3にそのままあてはめるのは実は難しいのです。
 このケースには問題点が複数あります。
 第1に、産業廃棄物であるキャビネットの運搬を、産業廃棄物収集運搬業許可を持たない運送業者が行っていることです。事務機器販売店自らが回収する場合は、事務機器販売店自身の廃棄物回収とみなされるため、事務機器販売店には産業廃棄物収集運搬業の許可は要りませんでした。しかし、運送業者が回収をする場合、キャビネットは運送業者が発生させた物ではなく、最終ユーザーが発生させた産業廃棄物を運搬することになるため、運送業者には産業廃棄物収集運搬業の許可が必要となります。
 第2に、下取り回収通知では、上記の状況下で、事務機器販売店がキャビネットの排出事業者になるとは当然書かれていません。
 仮に、事務機器販売店を排出事業者として(無理やり)位置づけるとするならば、古いキャビネットを回収する時点で、事務機器販売店は、自身を排出事業者とするマニフェストを運送業者に交付しなければなりません。ただし、前述したとおり、このケースでは運送業者は産業廃棄物収集運搬業の許可を持たないため、事務機器販売店は無許可業者へ収集運搬委託をしたことになり、刑事罰の対象となります。

 そのため、ケース3を廃棄物処理法に触れない形、かつ下取り回収通知の範囲で行うためには、最低でも、次のような点を抑えた上で行う必要があります。
●古いキャビネットの回収は、産業廃棄物収集運搬業者か、産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ運送業者が無償(最終ユーザーが回収費用を負担しないという意味)で行う
●事務機器販売店と、キャビネットの回収を行う事業者との間で、産業廃棄物収集運搬委託契約を締結
●事務機器販売店が排出事業者としてマニフェストを交付
●「産業廃棄物の発生場所」は「最終ユーザーの事業所」、「運搬の目的地」は「事務機器販売店の拠点」となる
●事務機器販売店が排出事業者として、委託契約書とマニフェストを運用する

 「不要品の最終ユーザーが回収費用の負担をしないこと」は非常に重要な要件です。最終ユーザーが回収費用を負担する場合は、下取り回収通知を当てはめることは不可能となりますので、通常の産業廃棄物処理委託として、最終ユーザーが排出事業者になるしかないからです。また、この場合、事務機器販売店は、最終ユーザーという他者が発生させた産業廃棄物の回収を引き受けることになりますので、産業廃棄物処理業許可を取得する必要があります。
 このように、下取り回収通知のポイントは、「無償で回収」と「事業者自らが回収」の2点になります。いずれも、現代日本においては、現実的には成立させることが難しい前提条件です。

 下取り回収通知の内容を満たせない場合は、産業廃棄物処理業者と提携する、または製造販売事業者が産業廃棄物処理業の許可を取得しさえすれば、同様の事業を合法的に行えます。くれぐれも、通知の内容を曲解や拡大解釈することのないようにご注意ください。

(2019年08月)

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