行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)
廃棄物処理法第21条の3第3項の条件を満たさない場合の注意点として、平成23年2月4日付 環廃対発第110204005号 環廃産発第110204002号通知では、次のように書かれています。
通知の中で注目していただきたい部分が2つありますので、以下、具体的な注意点を解説します。
①
法第21条の3第3項は、「本来は排出事業者には成り得ない下請事業者を、非常に狭く限定された特定の建設工事に限り、かつ1回あたりの運搬量が1立方メートル以下という少量の建設廃棄物を建設現場から持ち出す際に、排出事業者とみなす(=下請を排出事業者自身として扱う)」ための特例措置です。
そのため、この条件に当てはまらない工事や、1回あたり1立法メートル以上の量の廃棄物を下請事業者が運搬する場合、下請事業者には、他者(元請事業者)の廃棄物を運搬する許可である廃棄物収集運搬業の許可が必要となります。
通知にあるような状況で、廃棄物収集運搬業の許可を持たない下請事業者に建設現場から廃棄物の運搬をさせた場合、
・ 元請事業者は、無許可業者である下請事業者に運搬を委託したため「委託基準違反」に該当します。
・ この場合、契約書の作成を怠った場合等の法第26条の委託基準違反(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれの併科)ではなく、「無許可業者への委託」として、法第25条の委託基準違反(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれの併科)の対象になります。
・ 廃棄物の運搬を行った下請事業者も、「無許可営業」として、法第25条の罰則(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれの併科)の対象になります。
法第21条の3第3項は厳格に解釈して運用しないと、元請と下請の双方が重い刑事罰の適用対象となる可能性のある条文です。
下請の立場で建設工事を行う可能性のある事業者の場合は、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得しておいた方が安全、というよりは必須の事業許可と言わざるを得ません。
②
①でも述べましたが、法第21条の3第3項は、下請事業者を建設現場から廃棄物を持ち出す際にのみ、排出事業者とみなす特例措置ですので、運搬終了後も下請事業者が排出事業者とみなされるわけではありません。そのため、元請事業者が指定した場所へ建設廃棄物の運搬が一度終了すれば、それ以降その廃棄物に関して下請事業者が排出事業者とみなされる機会はありません。
下請事業者が「自分で運んだ廃棄物だから、排出事業者として自分の土地に保管する」、あるいは「排出事業者として自分で設置した廃棄物処理施設で処理をする」ことは、法律上認められていません。
(2020年09月)