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建設廃棄物⑳

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

建設廃棄物保管場所の届出義務
 平成22年改正では、建設廃棄物に関してのみ、300平方メートル以上の場所で保管をする際には、事前に行政への届出を義務付ける条文が創設されました。

廃棄物処理法第12条第3項
 事業者は、その事業活動に伴い産業廃棄物(環境省令で定めるものに限る。次項において同じ。)を生ずる事業場の外において、自ら当該産業廃棄物の保管(①環境省令で定めるものに限る。)を行おうとするときは、非常災害のために必要な応急措置として行う場合②その他の環境省令で定める場合を除き、あらかじめ、③環境省令で定めるところにより、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。その届け出た事項を変更しようとするときも、同様とする。
① 届出の対象
廃棄物処理法施行規則第8条の2(産業廃棄物の保管の届出の対象となる産業廃棄物)
 法第12条第3項前段の環境省令で定める産業廃棄物は、建設工事(法第21条の3第1項に規定する建設工事をいう。以下同じ。)に伴い生ずる産業廃棄物とする。

廃棄物処理法施行規則第8条の2の2(産業廃棄物の保管の届出の対象となる保管)
 法第12条第3項前段の環境省令で定める保管は、当該保管の用に供される場所の面積が300平方メートル以上である場所において行われる保管であつて、次の各号のいずれにも該当しないものとする。

一 法第14条第1項又は第6項の許可に係る事業の用に供される施設(保管の場所を含む。)において行われる保管

二  法第15条第1項の許可に係る産業廃棄物処理施設において行われる保管

三  ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法 (平成13年法律第65号)第8条の規定による届出に係るポリ塩化ビフェニル廃棄物の保管

② 届出義務の除外規定
廃棄物処理法施行規則第8条の2の3(事前の届出を要しない場合)
 法第12条第3項前段の環境省令で定める場合は、非常災害のために必要な応急措置として行う場合とする。
③ 届出の記載事項
廃棄物処理法施行規則第8条の2の4(産業廃棄物の保管の届出)
 法第12条第3項前段の規定による届出は、次に掲げる事項を記載した様式第二号の四による届出書を提出して行うものとする。

一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名

二 保管の場所に関する次に掲げる事項
イ 所在地
ロ 面積
ハ 保管する産業廃棄物の種類
ニ 積替えのための保管上限又は処分等のための保管上限
ホ 屋外において産業廃棄物を容器を用いずに保管する場合にあつては、その旨及び第一条の六の規定の例による高さのうち最高のもの

三 保管の開始年月日

2 前項の届出書には、次に掲げる書類及び図面を添付するものとする。

一 届出をしようとする者が保管の場所を使用する権原を有することを証する書類

二 保管の場所の平面図及び付近の見取図

 「建設廃棄物」を「産業廃棄物発生場所の外で自ら保管」する場合が、届出義務の対象となります。
 なお、廃棄物処理法の条文では、「産業廃棄物(環境省令で定めるものに限る)」としか規定されておらず、今後、環境省が届出義務の対象となる廃棄物を増やそうと考えれば、法改正ではなく、施行規則を改正するだけで可能となっています。実際のところ、平成22年の法改正時は、当初、建設廃棄物限定ではなく、すべての産業廃棄物の事業場(発生場所)外保管を届出の対象にする方向で、議論が行われていた経緯もあります。

 平成23年2月4日付環廃対発第110204004号、環廃産発第110204001号通知(部長通知)では、事前の届出を義務付けた背景を次のように説明しています。

第九 排出事業者が産業廃棄物を保管する場合の届出制の創設
 排出事業者がその事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業場の外において自ら行う保管に関し、当該産業廃棄物を過剰に又は長期間保管するなど基準に違反した不適正な保管を行う事例が見受けられる。しかし、排出事業者が自ら行う保管については、都道府県知事の許可等の事前手続が不要となっていたため、不適正保管が大規模な事案となるなど外観上明らかとなるまで発覚しにくく、生活環境保全上の支障の発生を未然に防止できないばかりか、これらの不適正な保管により生活環境保全上の支障が実際に生じた場合に、都道府県知事が当該不適正保管を行った事業者を把握する手だてがないことから、改善命令又は措置命令といった措置の迅速な実施に支障を来していた。
 そこで、排出事業者が産業廃棄物を生ずる事業場の外において当該産業廃棄物の保管を自ら行う場合の保管場所を都道府県知事が把握できる仕組みを設けることにより、不適正な保管が行われた場合にそれを早期に発見し、報告徴収、立入検査、改善命令又は措置命令といった法律上の措置を迅速に行い、もって生活環境保全上の支障の発生の未然防止と拡大防止を確実にするため、不適正な保管が行われる事案の多い建設工事に伴い生ずる産業廃棄物について、排出事業者が、当該産業廃棄物を生ずる事業場の外において、自ら保管(保管の用に供される場所の面積が300平方メートル以上の場所で行われるものに限る。)しようとするときは、あらかじめ、その旨を都道府県知事へ届け出なければならないこととした(法第12条第3項、第12条の2第3項等)。

 最初は建設廃棄物の不適切な保管だったものが、時間の経過とともに、そのまま不法投棄に発展することが多いため、届出によって、行政に建設廃棄物の保管場所を把握させ、不法投棄その他の不適正処理を未然に防止することを目的として、廃棄物保管場所の事前届出義務が創設されたことがわかります。

 なお、法第12条第3項には、「非常災害のために必要な応急措置として行う場合その他の環境省令で定める場合を除き」とあるように、天災その他の災害の発生により、やむを得ず建設廃棄物を工事現場の外で保管する場合は、事前に行政に届けることは不可能ですので、事後の届出で良いとされています。

(2021年5月)

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