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プラスチック資源循環促進法①

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(以下、「プラスチック資源循環促進法」)」が、2021年6月4日の参院本会議にて全会一致で可決したため、法律として成立しました。ちなみに、参議院に先立つ衆議院の審議の際も「全会一致」で可決されています。
 同法の制定を報じるメディアの多くは、『コンビニ等で提供されている使い捨てプラスチック製スプーンが有料化になる!』という印象を与える見出しを付けていました。実際にそうなる可能性は十分にありますが、実は、同法の条文には一言も「プラスチック製スプーンを有料化する」とは書かれていません。具体的には、同法の該当箇所には次のような規定が置かれています。

(事業者の判断の基準となるべき事項)
プラスチック資源循環促進法 第28条
 主務大臣は、プラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するため、主務省令で、その事業において特定プラスチック使用製品(商品の販売又は役務の提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品(容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律第二条第一項に規定する容器包装を除く。)として政令で定めるものをいう。)を提供する事業者であって、特定プラスチック使用製品の使用の合理化を行うことが特に必要な業種として政令で定めるものに属する事業を行うもの(定型的な約款による契約に基づき、当該業種に属する事業を行う者に特定の商標、商号その他の表示を使用させ、商品の販売又は役務の提供に関する方法を指定し、かつ、継続的に経営に関する指導を行う事業を行う者を含む。以下「特定プラスチック使用製品提供事業者」という。)が特定プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制するために取り組むべき措置に関し、当該特定プラスチック使用製品提供事業者の判断の基準となるべき事項を定めるものとする。

 つまり、これから主務省令によって、特定プラスチック使用製品の「提供を有料化」、あるいは「他の製品(木製の製品等)への切り替え」等の具体的な方法が指定されることとなります。2020年7月から始まった「レジ袋有料化」の動きを考えると、相当に高い確率で、特定プラスチック使用製品の提供も有料化されるのではないかと思いますが、現時点では、まだ有料化と決まったわけではありません。
 念のため、たとえば、コンビニエンスストアによる特定プラスチック使用製品の排出抑制の状況が、プラスチック資源循環促進法第28条で定められた判断基準と比較して著しく不十分と判断された場合であっても、いきなり刑事罰が科されるわけではありません。まず、同法第30条に基づき主務大臣から事業者に対し、排出抑制のために必要な措置の「勧告」が出されます。事業者がその「勧告」に従わなかった場合、主務大臣はその旨を「公表」します。そして、その「公表」後も正当な理由なく事業者が「勧告」に従わない場合は、主務大臣は事業者に対し勧告に関する措置を取るよう「命令」をします。この「命令」にも違反した段階で、事業者はようやく「50万円以下の罰金(同法第62条)」という刑事罰の対象となります。なお、プラスチック使用製品産業廃棄物を大量に排出する事業者(「多量排出事業者」)の排出抑制や再資源化の取組みが不十分な場合についても、同様の「勧告」「命令」の後、「刑事罰」を科す旨の規定が置かれていますので、機会を改めてその詳細を解説します。
 本稿執筆の時点では、プラスチック資源循環促進法の具体的な施行日は決定していませんが、「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」と附則で定められていることから、「2022年の4月1日から」となりそうです。

(2021年6月)

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