テナントが発生させた廃棄物の処理方法に関する連載の第3回目となります。
今回は、「テナントが委任状を交付することで、ビル管理者が自己の名義で委託契約を行うことの可否」に関する行政見解をご紹介します。
まずは、現在のテナント廃棄物に関する行政解釈の定説となっている環境省からの通知を再掲しておきます。
管理票の交付については、ビルの管理者等が当該ビルの賃借人の産業廃棄物の集荷場所を提供する場合のように、産業廃棄物を運搬受託者に引き渡すまでの集荷場所を事業者に提供しているという実態がある場合であって、当該産業廃棄物が適正に回収・処理されるシステムが確立している場合には、事業者の依頼を受けて、当該集荷場所の提供者が自らの名義において管理票の交付等の事務を行っても差し支えないこと。
なお、この場合においても、処理責任は個々の事業者にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約は、(排出)事業者の名義において別途行わなければならないこと。
前回までの連載で、上記の通知の問題点として、同通知のとおりに手続きを進めると、「『契約当事者たる排出事業者』と『産業廃棄物管理票交付者』が異なることになってしまう」点を指摘しました。
この矛盾を解決するために、かつて、公的な場でこの問題が議題(のほんの一部)として取り上げられたことがあります。
それは、2009年に民主党政権下で設置された「行政刷新会議」の中のワーキング部会「グリーンイノベーションWG」においてです。ただし、「取り上げられた」と言っても、委員と事務局との間での活発な議論が行われたわけではなく、現状の問題点と対処方針を環境省が整理をした結果が資料の一部として示されただけではありますが、公的な場で、現状の社会制度の問題として紹介された初めての機会であることは間違いありません。
上記のグリーンイノベーションWGの第7回会合で公開された資料では、「規制改革の方向性」として、
したがって、当事者間の契約に基づき、これらのグループを代表するものが排出事業者となることで、全体の廃棄物の3R促進および適正な処理委託を可能とするべきである。
と、問題提起がありました。
この指摘に対し、環境省は、
・なお、廃棄物処理法上、産業廃棄物の処理を委託する場合には、当該産業廃棄物の処分の場所や、受託者の許可の範囲等を記載した委託契約書により行うことを義務付け、委託者である排出事業者に、受託者が適切に当該産業廃棄物の処理の事業を行えるかどうかを確認させ、排出事業者責任の徹底を図っているところであり、この趣旨からは、委託者である排出事業者が受託者と自ら直接契約を締結することが望ましい。
とし、「現行制度下で対応可能であると考える」と回答しています。
上記の環境省の回答から、「委任状を交付しさえすれば、ビル管理会社が自己の名義で処理業者と直接契約しても良いのだな」と解釈した方が多いかもしれません。はたして、本当にそうなのでしょうか?
ここで重要となってくるのは、「排出事業者責任の転嫁」と「一括契約」の関係性です。
次回、実務的な観点から、「排出事業者責任の転嫁」と「委任状」、そして「一括契約の可否」を具体的に検討いたします。
(2022年1月)