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テナント(賃借人)が発生させた廃棄物について⑥(改革私案)

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行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 テナントが発生させた廃棄物の処理方法に関する連載の第6回目となります。
 前回は、廃棄物処理法と通知の整合性を図る手段として、

1. 「産業廃棄物管理票交付者」と「排出事業者」として、「ビル管理会社」と「各テナント」以外の「第三者」を指定する
2. 「産業廃棄物管理票交付者」と「排出事業者」を、「各テナント」とする
3. 「産業廃棄物管理票交付者」と「排出事業者」を、「ビル管理会社」とする

 という3つの方法があるものの、現実的な解決策としては、「3」の「ビル管理会社を排出事業者とみなす」方法が一番合理的、かつ支障が少ない手段と考えられることをお話ししました。
 今回はそう考える理由と、具体的な改善部分に関する私案を述べさせていただきます。

 まず、今のところ、環境省としては、「排出事業者の地位を、当事者間の合意のみで自由に移転させる」ことには否定的に見えます。当事者間の合意だけで排出事業者としての地位が容易に移転するようになると、排出事業者責任の帰属先が不明確となる可能性があることが、その大きな理由ではないかと思われます。
 しかしながら、ビル内のテナントが発生させた廃棄物の場合は、それをビル管理業務の一環として一カ所に集約し、ビル管理会社等の責任において処理を行わせる場合は、排出事業者責任の帰属先がビル管理会社に一本化されることになり、逆に帰属先は明確になります。
 また、「店舗や駅に設置したゴミ箱」の場合のように、「そのゴミ箱に持ち込みをした人物」を「個別のゴミの排出者」とするのではなく、「店舗や駅等の施設管理者」をゴミの排出事業者として、適切に管理させている事例も多々あります。
 「店舗や駅に設置したゴミ箱」の例にならえば、「ビルのテナントが発生させた廃棄物」を「ビル管理会社等が発生させた廃棄物」として扱うことに、それほど大きな違和感はありません。
 ただし、テナントが発生させたすべての廃棄物を自動的にビル管理会社の廃棄物とみなすことが不適切な場合もあります。例えば、取扱いに慎重な注意が必要とされる劇薬を、普通のオフィスごみと一緒くたに捨てられてしまうと、それを回収する処理業者に重大な危険が及ぶ可能性があるからです。
 そのため、無制限にビル管理会社の廃棄物とみなすのではなく、「ビル管理会社が安全に管理できる物」と「そうではない物(例:劇薬その他の危険物)」を区別し、危険物はそもそもの排出事業者である各テナントが責任をもって処理委託をする、という整理も不可欠であると思います。

 以上のように考えた結果、導き出された改善案は次のようになりました。
 まずは、改善対象となる、現行の平成23年3月17日付環廃産発第110317001号通知の関連部分を掲載します。

平成23年3月17日付環廃産発第110317001号(要約)

 管理票の交付については、ビルの管理者等が当該ビルの賃借人の産業廃棄物の集荷場所を提供する場合のように、産業廃棄物を運搬受託者に引き渡すまでの集荷場所を事業者に提供しているという実態がある場合であって、当該産業廃棄物が適正に回収・処理されるシステムが確立している場合には、事業者の依頼を受けて、当該集荷場所の提供者が自らの名義において管理票の交付等の事務を行っても差し支えないこと。
 なお、この場合においても、処理責任は個々の事業者にあり、産業廃棄物の処理に係る委託契約は、(排出)事業者の名義において別途行わなければならないこと。

 これを、次のように変えてはどうか、と考えています。

(注:以下は、筆者の考える改善案であり、正式な(公式の)通知内容ではないことにご注意ください)
 ビルの管理者等が当該ビルの賃借人の産業廃棄物の集荷場所を提供している実態があり、当該産業廃棄物が適正に回収・処理されるシステムが確立している場合には、事業者の依頼を受けて当該集荷場所を提供する者を、集めた産業廃棄物の排出事業者として扱って差し支えない。
 ただし、特別管理産業廃棄物や共同の集荷場所で他の廃棄物と一緒に保管することが適切ではない廃棄物については、この限りではない。

 一私人が考えついただけの表現ですので、言い足りていない面が多々あると思いますが、「排出事業者が誰なのかを明確にする」ことを主眼とする改善案です。
 改善の要望が数多く上がるようになれば、環境省が改善を検討し始める確率もそれだけ増すことになりますので、行政に対し、できるだけ多くの方に改善の要望を上げていただくことを期待しております。

(2022年4月)

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