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産業廃棄物処理委託は下請法の適用対象になるのかどうか(その3)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今回は、「下請法」における「製造委託」の「詳細な定義」を見て、産業廃棄物処理委託が下請法の「製造委託」に該当するのかどうかを明らかにします。

 まず、「下請法」の「製造委託」は、次のように定義されています。

下請法第2条第1項
 この法律で「製造委託」とは、事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型又は業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造を他の事業者に委託すること及び事業者がその使用し又は消費する物品の製造を業として行う場合にその物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料又はこれらの製造に用いる金型の製造を他の事業者に委託することをいう。

 「製造委託」の方が、「役務提供委託」よりも、意味するところが具体的に理解しやすいと思います。
 「役務提供委託」の回でも見たとおり、「事業者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む)(以下略)」が、「下請法」の対象になるか否かを判断するための重要なポイントとなります。
 結論から申し上げると、「産業廃棄物を私の代わりにあなたが安全に処理してください」として、排出事業者が産業廃棄物処理業者に委託する行為は、排出事業者の「自ら用いる役務」を委託することに当たり、「(排出事業者の)業として」製造委託をするわけではありませんので、産業廃棄物処理委託は、「下請法」で定めるところの「製造委託」にも該当しない、となります。

 食品工場が食品の製造過程で発生した「動植物性残さ」を、産業廃棄物処分業者に「堆肥化」を委託する場合をイメージいただくと、わかりやすいかと思います。食品工場は「処分を委託」しているのであり、(自社で使うための)堆肥の製造を委託しているわけではないですね。
 実際のところ、食品工場の大部分は、加工後の堆肥を「業として販売」するわけではなく(中には、そうした事業を行う食品製造企業が実在するかもしれませんが)、大量の堆肥を戻されたところで、食品工場でそれを使い尽くすことはほぼ不可能ですしね。

 委託する処分の内容が「堆肥化」という「堆肥を製造する」ことを連想させる用語であるため、「すわ!堆肥化は製造委託なのでは!?」と、連想をさらにたくましくする人が現れてもおかしくありませんが、「下請法」の「製造委託」は、製造的(?)な用語をすべて包括する万能の用語などではなく、「下請法第2条第1項」で定義された

使える通知・疑義解釈49-1画像
 行為に限定されます。

 ここまでの解説で、通常の産業廃棄物処理委託取引は、「下請法」の規制対象とならないことはご理解いただけたと思います。
 ご注意いただきたい点を補足すると、「プラスチック資源循環促進法」の制定、施行により、産業廃棄物処理業者ではない既存のプラスチック成形加工事業者等に、「当社の廃材すべてをプラスチック樹脂に加工して、加工後の全量を改めて返却してください」という「加工委託」を行うケースが増えているものと思います。
 このような場合は、排出事業者は加工委託した物品の所有権を放棄せずに、返却を求めているため、ここまで見てきた「下請法」の「製造委託」に該当しますので、「下請法」に基づく対応が必要となります(※)。

※「下請法」の対象になるかどうかを判断するためには、本稿で述べた要件の他に、親事業者と下請事業者双方の資本金額の確認等も必要になります。

(2022年7月)

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