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再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース発の疑義解釈(その2)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前回は、近年耳にする機会が増えた「タスクフォース」の定義を明らかにした上で、「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」の設置趣旨等を紹介しました。
 さて、令和3年9月30日付で環境省から発出された「第12回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(令和3年7月2日開催)を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について」をご覧になった方は多いと思いますが、この通知のきっかけとなった令和3年7月2日に開催された「第12回総点検タスクフォース」を「リアルタイム視聴した」方は非常に少ないと思います。「リアルタイム視聴はしなかったが、後日公開された議事録を一字一句くまなく読み込んだ」という方もほとんどいないと思います。
 環境省が周知した結果である通知の内容自体も重要ではありますが、その通知を出した理由やきっかけを知っていると、ただ単に通知を読み流すよりも、より多くの情報や気づきを得られる可能性が高まりますので、今回は、「第12回総点検タスクフォース」の論点等を押さえておきたいと思います。

 まず、「第12回総点検タスクフォース」の議題は、「バイオマス発電等の再生可能エネルギーの拡大に向けた廃棄物・リサイクル関連法制の在り方」でした。少々長い議題ですが、当日は2時間を掛けて、「再生可能エネルギーの拡大」と「廃棄物・リサイクル関連法制の在り方」の両方がバランス良く議論されましたので、タイトルに偽りはまったくありませんでした(笑)。

 「総点検タスクフォース」は、内閣府特命担当大臣(規制改革)の主宰の下、「構成員」となる有識者が、省庁や関連事業者から現状の問題点や改善案をヒアリングする、というスタイルで開催されています。
 第12回会合では、省庁側出席者は「環境省」「農林水産省」「国土交通省」「経済産業省」の4省でしたが、議題が「廃棄物・リサイクル関連法制の在り方」であったため、環境省が答える場面がほとんどでした。
 関連事業者としては、バイオガス発電事業を営んでいる2社が出席していました。

 その2社からバイオガス発電事業の障壁、あるいは支障となっている法的な問題の現状が示された後、規制の在り方の再検討の要望等、法律上の問題とその具体的な解決案などが提案され、環境省からその解決案の是非について個別に回答する、という流れで議論が進められました。環境省が第12回会合において「周知していきたい」と答えた内容が、令和3年9月30日付通知として結実したことになります。

 通知の詳細は次回から個別に見ていきますが、第12回会合では、「廃棄物処理法の抜本的な改正の可能性」について、環境省が明確に回答する場面がありました。しかも、その場面は、一度ならず二度もあり、同じ趣旨の回答が繰り返されましたので、現時点での環境省が廃棄物処理法に抱いている考え方が非常に明確になっています。

Q:(河野太郎特命担当大臣)
 廃掃法が、ちょっと世界の趨勢すうせいと違うという議論は、要するに、この何年というか、何十年あって、これを将来的に本当にどうするのというのは、ややエネルギーとは違いますけれども、エネルギーにも関わってくることだと思うので、そこはどうするつもりなのかなと

A:(環境省 環境再生・資源循環局次長)
 (廃棄物処理法の)抜本見直しにつきましてでありますが、日本の今のやり方としましては、廃棄物処理につきましては、非常に不適正処理が多かったものですから、どちらかといいますと、廃棄物処理法は、より厳格にしていこうという流れで、これまで議論をされまして、ただ、リサイクル、リユース、こういったものを進めるというのは、もう一方の重要な政策でございますので、それらにつきましては、例えば、自動車リサイクルであるとか、家電リサイクルなど、リサイクルを進めることによって埋立て処分場の逼迫度合いであるとか、あと資源の有効利用であるとか、そういったものを進めるべきものを、一番適した法体系をつくって、そちらでリサイクルを、より回せるようにしようということで対応してきたということで、対応といたしましては、これらリサイクル法と廃掃法のワンセットということで対応してきたと理解しております。
 ですので、今回の話でいきますと、バイオマス食品リサイクルを対象としたという観点から食品リサイクル法ができたということだと思っていますので、それらの使い道、使い勝手をよりよくしていくということが、リサイクルを進める分野では重要だと考えております。

 ここでは、抜本改正の可否について、大臣からの質問に直接回答していませんが、リサイクル推進のためには、「廃棄物処理法の抜本改正よりも、個別リサイクル法の改正で足りる」と明確に考えていることがわかります。

Q:(構成員)
 問題はその廃掃法自体が新たな環境の中で最適な法体系になっていないのではないかということだと思います。この見直しについて、どう考えられるのかを、もう一度回答をお願いできればと思います。

A:(環境省 環境再生・資源循環局次長)
 法体系自体を見直すということは、(一般廃棄物の)統括的な(処理)責任を根本からおかしいと、変えるという話につながりますので、ここは環境省としては考えていないというところでございます。

 環境省は、上記の回答の前段で「一般廃棄物の統括的な処理責任は市町村にある」ことを指摘しています。つまり、「一般廃棄物と産業廃棄物の区分や処理責任といった、廃棄物処理法の抜本的な在り方を変える法律改正を、環境省は必要と考えていない」という趣旨になります。

 議論を進める際には、相手の考えを正確に知る必要があります。それを欠くと、お互いが譲歩できる着地点を見いだすことは不可能となり、議論ではなく、単なる言い争いになってしまいます。
 上記の質疑を読んだところで、世の中の廃棄物処理法にまつわる問題を一つも解決できませんが、少なくとも、「廃棄物処理法の抜本改正の要否」に対する環境省サイドの考えを知ることだけはできました。

(2022年9月)

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