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再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース発の疑義解釈(その4)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今回から、令和3年9月30日付「第12回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(令和3年7月2日開催)を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について」の「第1 一般廃棄物及び産業廃棄物の混合処理について」の詳細を見ていきます。
 通知文自体に難解な表現はありませんが、実務的な観点から、「補足説明の必要がある」と筆者が考える部分がありますので、該当箇所に下線と番号を付記しました。

令和3年9月30日付「第12回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(令和3年7月2日開催)を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について」

第1 一般廃棄物及び産業廃棄物の混合処理について
 他人の廃棄物を処理する場合は、当該処理を行う廃棄物の区分ごとに廃棄物処理業の許可を取得する必要があるが、産業廃棄物の区分については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号)第2条において①排出元の業種等が指定されているものがあることから、たとえ事業活動に伴つて排出される廃棄物が同様の性状を有する場合であっても、当該指定業種等から排出される廃棄物を処理する場合は産業廃棄物処理業の許可が、当該指定業種等以外から排出される廃棄物を処理する場合は一般廃棄物処理業の許可がそれぞれ必要となる。ただし、②同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物を、当該一般廃棄物と産業廃棄物の両方の処理業の許可を有する者の運搬車又は施設において混合して処理することについては、法令上禁じられていない
 ついては、同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物の両方の収集運搬業の許可を有する者の運搬車において、③搭載する廃棄物ごとに容器を分けること、又は④ロードセル等の機器で搭載する廃棄物の数量を計測すること等により、それぞれの廃棄物の数量を適切に把握することができれば、⑤他の物と区分して収集・運搬することが義務付けられている廃棄物を除き、⑥同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物を混載して運搬しても差し支えない。その際、⑦産業廃棄物の運搬に係る産業廃棄物管理票の交付の義務は従来通り課されることとなる。
 また、⑧同様の性状を有する一般廃棄物と産業廃棄物の両方の処分業の許可を有する者の施設において、当該一般廃棄物と産業廃棄物を混合して保管、投入及び処分しても差支えない。なお、⑨処理後の残さについては、処分した一般廃棄物と産業廃棄物の比率で按分し、以後それぞれの区分の残さとして取り扱っても差し支えない

 今回は、第1段落の①について深掘りをしたいと思います。

① 排出元の業種指定がある産業廃棄物
 まず、廃棄物処理法の基礎中の基礎の話で恐縮ですが、「産業廃棄物」の法的な定義は次のようになっています。

廃棄物処理法第2条 第4項
 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
  •  一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
  •  二 (略)
 廃棄物処理法の条文上で直接規定されている「燃え殻」「汚泥」「廃油」「廃酸」「廃アルカリ」「廃プラスチック類」の6種類については、排出元の業種限定がありませんので、「事業活動に伴つて生じた廃棄物」であれば、事業の内容や企業規模の大小を問わず、すべて産業廃棄物に該当します。
 廃棄物処理法第2条第4項の「その他政令で定める廃棄物(14品目)」の中に「排出元の業種限定がある産業廃棄物」があり、具体的には次の6品目となります。
  • ・ 「紙くず」 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、パルプ、紙又は紙加工品の製造業、新聞業(新聞巻取紙を使用して印刷発行を行うものに限る。)、出版業(印刷出版を行うものに限る。)、製本業及び印刷物加工業に係るもの
    (※PCBが塗布され、または染み込んだ紙くずの場合は、排出元の業種に関わらず、すべて産業廃棄物として扱います。)
  • ・ 「木くず」 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、木材又は木製品の製造業(家具の製造業を含む。)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業及び物品賃貸業に係るもの
    (※木製パレット及びパレットへの貨物の積付けのために使用したこん包用の木材、PCBが染み込んだ木くずの場合は、排出元の業種に関わらず、すべて産業廃棄物として扱います。)
  • ・ 「繊維くず」 建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、繊維工業(衣服その他の繊維製品製造業を除く。)に係るもの
    (※PCBが染み込んだ繊維くずの場合は、排出元の業種に関わらず、すべて産業廃棄物として扱います。)
  • ・ 「動植物性残さ」 食料品製造業、医薬品製造業または香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物
  • ・ 「動物のふん尿」 畜産農業に係るものに限る
  • ・ 「動物の死体」 畜産農業に係るものに限る

上記6品目以外の「ゴムくず」他の「その他政令で定める廃棄物」には、排出元の業種限定がありませんので、事業活動に伴つて排出された物はすべて産業廃棄物に該当します。

 さて、実務において、「自社事業が(上述した)排出元の業種に当てはまるかどうか」で悩む可能性がありそうなものは、「紙くず」「木くず」「繊維くず」「動植物性残さ」の4品目ではないかと思います。
 「紙くず」「木くず」「繊維くず」の発生元として、「建設業」が共通して挙げられていますが、建設業者が発生させた紙ゴミがすべて産業廃棄物になるわけではなく、「工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る」という縛りがありますので、産業廃棄物に該当する物は、工事現場から排出された廃棄物だけに限定されます。そのため、たとえば、建設会社に保管されていた過去の台帳や図面等は、「工作物の新築、改築または除去に伴つて生じたわけではない」ため、「事業系一般廃棄物」でしかありません。
 「動植物性残さ」の場合は、「食料品製造業」「医薬品製造業」「香料製造業」とわずか3業種しか対象とならないことに注意が必要です。ただし、たとえば「食料品製造業」の中にも、様々な食品製造・加工事業の形態があるように、「排出元の業種にあてはまるかどうか」を正確に判断するためには、「日本標準産業分類」の「食料品製造業」に関する分類を参照する必要があります。

(2022年11月)

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