大栄環境グループ

JP / EN

再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース発の疑義解釈(第2-4)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 令和3年9月30日付「第12回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(令和3年7月2日開催)を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について」の 『第2 「「規制改革・民間開放推進3か年計画」(平成17年3月25日閣議決定)において平成 17 年度中に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について」(平成18年3月31日付け環廃産第060331001号通知)の「第二 産業廃棄物を使用した試験研究に係る規制について」の適用について』の続きとなります。

 今回は、上記の「第2 産業廃棄物を使用した試験研究に係る規制について(略称)」の引用元となる 「平成18年3月31日付け環廃産第060331001号通知」で示された、「参考 「試験研究」として認める際の規制の明確化に係る事例」を紹介します。
 上記の「参考」では、これまで「試験研究に該当する事例」として判断された3つの事例が紹介されており、個々の案件ごとに付された条件が記載されていますので、産業廃棄物所管行政の重視する内容の一端が理解できるようになると思います。余談ですが、平成17(2005)年度の環境省は、行政機関の判断基準を周知するために、このように有用な通知を頻発してくれていましたので、当時の担当者は非常に優秀、かつ真摯な人であったと、筆者個人としては高く評価しています。

 以下、個別の案件ごとに、「試験研究の内容」と「付された条件」をまとめ、これまで本稿において解説してきたことと関連する重要なポイントを解説していきます。

【試験研究に該当する事例①】
● 事例内容
 浄水場汚泥及び植物繊維の混合比、土壌改良土の物理的、化学的性状等の安全性確認を目的として、浄水場汚泥の植物繊維質混練りによる土壌改良土の製造を試験研究で行う
  • ① 排出事業者は計画書の記載の事業者に限ること。
  • ② 処理料金は必要最低限(試験に必要な経費見合い)のみ受領すること。
  • ③ 産業廃棄物は、計画書に記載の品目に限り、試験に必要な最小限度の産業廃棄物のみ受領すること。
  • ④ 試験に必要な最低限の期間として、平成18 年4月30 日までとすること。
  • ⑤ 試験に当たっては生活環境の保全上支障のおそれがないよう措置を講じ、かつ、再生品による生活環境の保全上支障のおそれがないものであること。
  • ⑥ 試験に当たっては、法に規定する処理基準等を踏まえ、計画書に記載された方法により検査、管理等を行うこと。
  • ⑦ 試験とは、新たな処理技術の研究開発又は安全性及び市場性の各種データを得るための実証試験のことであることに留意すること。
  • ⑧ 試験の状況及び結果について、地方公共団体に報告すること。
  • ⑨ 試験により生活環境保全上支障を生じるおそれがある場合は、試験を中止すること。
  • ⑩ 試験により生活環境保全上支障を生じるおそれがあると認めた場合、条件を履行しない場合等は、承認を取り消すことがあること。
  • ⑪ 試験が終了した際には試験完了報告書を提出すること。

 ②の「処理料金は必要最低限(試験に必要な経費見合い)のみ受領すること。」が重要です。
 平成18年3月31日付通知で試験研究として認定するための条件に、「営利を目的とせず」がありましたが、「完全非営利の無償引き受け」ではなく、「経費に見合う必要最低限の処理料金の受領」を環境省自体が認めていることがわかります。
 また、①では、「排出事業者は計画書の記載の事業者に限ること」という条件が付されており、不特定多数の事業者から汚泥を引き受けることは、明確に禁止されています。

【試験研究に該当する事例②】
● 事例内容
 地方公共団体と企業による共同事業で、建設汚泥の再資源化に係る新しい技術を確認すべく、実証プラントを設置し、実際に産業廃棄物として排出された建設汚泥の処理を行う。
  • ① プラントの設置、維持管理は企業が行う。設置する場所は地権者の了承を得た上で、排出事業者である建設会社が施工する敷地と同一とする。
  • ② 実証試験期間は6ヶ月とし、延長は行わない。試験終了後にプラントは撤去する。
  • ③ 排出事業者から無償で建設汚泥の提供を受ける。
  • ④ 実証試験を行う者は実証試験に使用する建設汚泥の量、処理経過・結果は、監督する地方公共団体と排出事業者に逐次報告する。
  • ⑤ 再資源化の目安として、地方公共団体と排出事業者があらかじめ一定の基準を設定しておき、それに合致したものを再資源化されたものとする。
  • ⑥ 再資源化がされた場合でも、再資源化がされなかった場合でも、処理後の物は排出事業者に戻し、排出事業者において活用又は産業廃棄物処理委託を行う。

 「事例2」では、地方自治体が共同事業者であるためか、条件③で「排出事業者から無償で建設汚泥の提供を受ける」こととされています。条件①で「排出事業者である建設会社が施工する敷地と同一」の土地で、試験プラントの設置・維持管理を行うこととされていますので、汚泥の排出事業者は、不特定ではなく、特定の1社、あるいは特定のJVであるものと思われます。
 その他、条件⑥で、「再資源化がされた場合でも、再資源化がされなかった場合でも、処理後の物は排出事業者に戻し、排出事業者において活用又は産業廃棄物処理委託を行う」とされていますので、汚泥を提供する排出事業者に処理後物の全量が戻されるという、「加工委託」のような構造になっている点にも注目しておきたいところです。

【試験研究に該当する事例③】
● 事例内容
 プラントメーカーが新規に製品開発する過程で、実際の廃棄物(高濃度の重金属を含む汚泥等)を使用する。
  • ① 従来にない技術開発であること。
  • ② 実験(開発)期間を区切ること。
  • ③ プラントメーカーは排出事業者から無償で産業廃棄物の提供を受けること。
  • ④ 処理基準を満たすための試験を目的とすること。
  • ⑤ 処理後の物はプラントメーカーが排出事業者として、適正に処理(委託)を行うこと。

 「事例3」は、それ以外の事例とは異なり、「高濃度の重金属を含む汚泥等」の試験研究です。
 「事例3」では、排出事業者が「特定の事業者」なのか、「不特定の事業者なのか」が明確に記載されていませんが、あえて排出事業者を特定していないことや、条件⑤で「処理後の物はプラントメーカーが排出事業者として、適正に処理(委託)を行うこと」とされていることから考えると、「不特定(と言っても、実際にはかなり限定されることになりますが)の排出事業者」からの無償引受けを前提としているように思われます。

 以上のように、「排出事業者を特定すべきかどうか」や「処理料金を徴収するかどうか」、そして「処理後物の処理責任者」は、実際に扱う産業廃棄物の種類や、試験研究内容の違いによって、ケースバイケースで慎重に判断されています。産業廃棄物を用いた試験研究を計画している方は、本通知の内容をよく咀嚼した上で、自社の研究計画立案にご活用ください。

(2023年9月)

PAGE TOP