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再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース発の疑義解釈(第3-1)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今回は、令和3年9月30日付「第12回再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース(令和3年7月2日開催)を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律の適用に係る解釈の明確化について」の 『第3 地下工作物の取扱いについて』 の詳細を見ていきます。

第3 地下工作物の取扱いについて
 地下工作物の存置については、一般社団法人日本建設業連合会において「既存地下工作物の取扱いに関するガイドライン」(2020年2月)が作成されている。次に掲げる①から④までの全ての条件を満たすとともに、同ガイドライン「3.2.3 存置する場合の留意事項」に基づく対応が行われる場合は、関連事業者及び土地所有者の意思に基づいて地下工作物を存置して差し支えない。なお、存置の対象となるのは、コンクリート構造体等の有害物を含まない安定した性状のものに限られる。また、戸建住宅の地下躯体は対象に含まれない。
  • ① 存置することで生活環境保全上の支障が生ずるおそれがない。
  • ② 対象物は「既存杭」「既存地下躯体」「山留め壁等」のいずれかである。
  • ③ 地下工作物を本設又は仮設で利用する、地盤の健全性・安定性を維持する又は撤去した場合の周辺環境への悪影響を防止するために存置するものであって、老朽化を主な理由とするものではない。
  • ④ 関連事業者及び土地所有者は、存置に関する記録を残し、存置した地下工作物を適切に管理するとともに土地売却時には売却先に記録を開示し引き渡す。

 なお、地下工作物を存置する場合においても、石綿含有建材やPCB使用機器などの有害物、これら以外の内装材や設備機器などは全て撤去すべきものである。また、地方公共団体が上記の①から④までの条件を満たしていないと判断した場合は「廃棄物」に該当し得るとともに、生活環境保全上の支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められると判断した場合は、当該地下工作物の撤去等、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることが可能である。

 一定の条件に当てはまる「既存杭」等の3種類の地下工作物については、地盤の健全性や安定性を維持するためであれば、地下に存置することを認めるという内容です。
 これは、個人的には、非常に実用性が高い画期的な通知であると高く評価しています。通知の対象となる業態が建設業だけであるためか、建設業界以外では話題に上らないテーマかもしれませんが、「地下工作物の存置」に関する地方自治体の硬直化した解釈を一変させる、現代の社会実態に即した新しい解釈基準となっています。
 先ほど、「硬直化した」と批判した多くの地方自治体の解釈は、昭和57年環産第21号通知で示された疑義解釈「地下工作物の埋め殺し」をベースとし、「使用しなくなった地下工作物はすべて産業廃棄物に該当するので、それを掘り出さずに埋め戻すことは不法投棄である」と、地下工作物の存置を例外なく厳格に否定するものでした。

参考:昭和57年環産第21号通知
(地下工作物の埋め殺し)
【問11】
 地下工作物が老朽化したのでこれを埋め殺すという計画を有している事業者がいる。
 この計画のままでは生活環境の保全上の支障が想定されるが、いつの時点から法を適用していけばよいか。
【答】
 地下工作物を埋め殺そうとする時点から当該工作物は廃棄物となり法の適用を受ける。

 しかしながら、「昭和57年環産第21号通知」自体は平成12年に廃止されていますので、現在の地方自治体の判断を拘束する力を既になくしています。しかるに、「埋め殺し」と「法の適用」というキーワードが象徴する20年以上前に廃止された通知が、いまだに「不磨の大典」のごとく崇められ(?)、影響力を発揮し続けてきた状況に、環境省はこの通知で一石を投じたことになります。
 もちろん、筆者も、土中に建設廃棄物を投げ捨て、土で隠してしまうという行為は悪質な不法投棄であると思っています。また、最近、「ゲリラ不法投棄」や「工事現場にそのまま廃棄物を埋める」という古典的な不法投棄事件が頻発している状況を考えると、不法投棄物の大部分を占める建設廃棄物を発生時点から厳格に規制していく方針自体にも大賛成です。
 しかしながら、例えば「地盤の安定化のために設置された既存杭」のように、それを取り除くと、周辺の地盤の安定性を悪化させるおそれがある地下工作物の場合は、わざわざ抜いてしまわずに、地下にそのまま存置する方が確実に合理的だと思います。「廃棄物という名の付く物はすべからく地中に存置してはならない!」という教条的な解釈だけで非現実的な行政指導を行うことが妥当とも思いません。
 「第3 地下工作物の取扱いについて」は、一定の条件に当てはまる地下工作物を「廃棄物」ではなく、「地下工作物」として存置を認めるという具体的な「解釈基準」です。
 なお、「既存杭」「既存地下躯体」「山留め壁」であれば、無条件に地下存置が認められるというわけではないことにご注意ください。次回から、地下存置が認められる工作物の条件を、通知発出の元となった日本建設業連合会のガイドラインを参照しながら、検討していきます。

(2023年10月)

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