今回は、2010年廃棄物処理法改正前に作成された「廃棄物処理制度専門委員会報告書」の記述をベースとし、「処理状況確認」のあるべき姿を考えていきます。
「排出事業者責任の強化・徹底」
「(イ)適正な委託処理の確保」
「排出事業者は最終処分が終了するまでの一連の処理行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講じなければならないという義務を有している」と、「排出事業者の義務」がいきなり定義されています。その後に続く文章は、この義務をいかに果たしていくべきかという、具体的な方法論を述べていることになります。
適正処理を確保する方策としては、「委託契約書に沿った処理」が適切に実施されているかどうかを「定期的に確認するべき」と、排出事業者の行動目標が掲げられています。その直後に、目標達成の手段として、「実地確認」と「産業廃棄物処理業者による情報提供等により確認」という2つの手段が例示されています。
- ・定期的な実地確認
- ・産業廃棄物処理業者による情報提供等により確認
上記の内容を企業実務に落とし込んでいく際には、
目標に関しては、「委託契約書に沿った処理」と「定期的に確認」
手段に関しては、「実地確認」と「産業廃棄物処理業者による情報提供等により確認」
というキーワードを押さえることが重要と思われますので、その詳細を検討していきます。
簡潔な用語ですが、非常に重要な内容です。現在、このキーワードを意識することなく、「社会見学」のような気持ちで「現地確認」に臨んでいる人も多いのではないでしょうか?
言うまでもなく、排出事業者が排出した産業廃棄物を、業者が契約どおりに処理できるかどうかを確認することが、現地確認、あるいは処理状況確認の目的ですので、排出事業者の担当者としては、最低限、「訪問先の処理業者との契約内容」や「その業者の許可内容」を把握しておく必要があります。
「破砕だけ」、あるいは「焼却だけ」等の単一の処分方法しか許可されていない業者であれば、許可内容を把握することは容易ですが、「破砕」「選別」「切断」「圧縮」と、一つの事業所内に複数の産業廃棄物処理施設があり、複数の処分方法が許可されている業者の場合は、実際に事業所を訪問し、稼働している設備と許可内容を紐づけ、一連の処理工程を把握しないと、その業者の処理方法の全容を理解できないと思います。
そのため、初めて訪問する場合は、
- ・ あらかじめその業者と交わした産業廃棄物処理委託契約書を精読し、「自社のどんな産業廃棄物」を「どのような方法で処分してもらうか」を把握した上で
- ・現場訪問の際には、実際の設備と許可内容を紐づけ、許可証に記載されていない処理施設が無断で設置されていないかにも注意を払い
- ・中間処理終了後の残さの性状が、最終処分場(中間処理委託契約書の記載事項)へ適切に搬入できる状態かを確認
- ・可能であれば、中間処理残さを最終処分場へ搬出する様子も確認
「訪問前」の準備は非常に重要な手順です。委託契約どおりに処理されているかどうかを見極めるためには、委託契約の内容を理解することが不可欠だからです。
自社の委託契約の全体像を把握する上で重要なポイントは、目の前にいる処理業者との契約内容だけではなく、「発生」「保管」「回収」「中間処理」、そして「最終処分」という一連の流れとして、自社の産業廃棄物が処理される工程を思い浮かべられるかどうかとなりますので、「委託契約書」と「許可証の写し」の両方を見比べながら、処理フロー全体における、訪問先の処理業者の位置づけをイメージできるようにしておくと良いでしょう。
(つづく)
(2024年06月)