前回に引き続き、過去の「廃棄物処理制度専門委員会報告書」での指摘をベースとした、「処理状況確認」のあるべき姿を考えていきます。
「排出事業者責任の強化・徹底」
「(イ)適正な委託処理の確保」
前回までに、上記の専門委員会報告書の指摘を実務的に満たすためのキーワードとして、「委託契約書に沿った処理」「定期的に確認」「実地確認」と「産業廃棄物処理業者による情報提供等により確認」の4つを挙げ、「委託契約書に沿った処理」が行われているかどうかをチェックするポイントを解説しました。
今回は「定期的に確認」に関して深掘りをしていきます。
「定期的に確認」
皆様がご存知のとおり、廃棄物処理法では「定期的に」の「具体的な頻度」については規定されていません。ただし、地方自治体が独自に定める条例では、「1年間に1回」という具体的な頻度を定めているところが多くあります。
「では、専門委員会報告書の上記の『定期的に』や『実地に確認』は、ただ単に理想的(と思われる)状況を表明した『理念』のようなものなのか?」という批判が出そうですが、筆者の考えでは、「専門委員会報告書の指摘は、理想的な目標を表明したものというよりも、2010年改正以前から廃棄物処理法にあった類似の規制条文を念頭に置いた、言い換えると、その先行条文と同様の規制を産業廃棄物処理状況確認にも加えようとしていたものではないかと思っています。
2 市町村が行うべき一般廃棄物(特別管理一般廃棄物を除く。以下この項において同じ。)の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる一般廃棄物を定めた場合における当該一般廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「一般廃棄物処理基準」という。)並びに市町村が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を市町村以外の者に委託する場合の基準は、政令で定める。
一般廃棄物の処分又は再生を一年以上にわたり継続して委託するときは、当該委託に係る処分又は再生の実施の状況を環境省令で定めるところにより確認すること。
「環境省令で定めるところ」は
令第4条第九号ロの規定による確認は、一年に一回以上、実地に行うものとする。
すなわち、市町村が市町村以外の者に一般廃棄物処理を委託する場合で、処分または再生を一年以上にわたって継続して委託するときは、「一年に一回以上、実地に確認に行かねばならない」となりますので、「実地に」という用語が専門委員会報告書に現れていたことを考慮すると、環境省サイドの構想としては、「産業廃棄物処理委託においても、一年に一回程度の実地確認が適切」という考えが根底に有ったのではないかと思われます。
一般廃棄物とは異なり、産業廃棄物は法律で実地確認の頻度等が規制されていませんが、「定期的に確認」することは、委託先処理業者が信頼できるかどうかを確認するためには非常に強力な手段です。しかしながら、いかに効果が高い手段であっても、それを実行するためには時間と経費が掛かる以上、最小の回数で、最大の効果を発揮したいと誰しも考えるところでしょう。次回、産業廃棄物管理実務のシーンごとに、適切な実地確認の頻度を探っていきます。
(つづく)
(2024年07月)