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「処理状況確認」について(第9回)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前回に引き続き、令和5年3月31日付通知「デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について」の詳細を見ていきます。

 令和5年3月31日付通知「デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について」
 「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(令和4年6月3日デジタル臨時行政調査会決定)及び「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、代表的なアナログ規制7項目(目視規制、定期検査・点検規制、実地監査規制、常駐・専任規制、書面掲示規制、対面講習規制、往訪閲覧・縦覧規制)に関する規制等の見直しが求められている。
 これを受けて、今般、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45 年法律第137 号。以下、「法」という。)等のうち法令上の解釈の明確化を図ることとされている事項等について、下記のとおり通知する。
 貴職におかれては、下記の事項に留意の上、その運用に遺漏なきを期されたい。
 なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言であることを申し添える。
 上記の通知総論については前号で解説しましたので、今回は各論の「第1 排出事業者の処理状況の確認について」の詳細を見ていきます。各論は少し長くなりますので、段落ごとに解説を加えていきます。
(項目名と第1段落)
第1 排出事業者の処理状況の確認について
 第4回デジタル臨時行政調査会作業部会(令和4年3月10日開催)において、排出事業者の処理状況の確認に関して、デジタル技術の活用について解釈の明確化をすることとされたところである。
※排出事業者が処理状況確認を行う際に、「デジタル技術」を活用するための解釈基準を明確にする必要があり、本通知でそれを解説していくという方針が示されています。
(第2段落)
 法第3条第1項及び第12条第7項において、排出事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならず、その産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、処理の状況に関する確認を行い、最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならないこととされている。その処理の状況に関する確認にあたっては、処理を委託した産業廃棄物の保管状況や実際の処理工程等について処理業者とコミュニケーションをとりながら確認を行うことや、公開されている情報について不明な点や疑問点があった場合には処理業者に回答を求めることなど、法に基づき適正な処理がなされているかを実質的に確認することが重要である。
※前半は、「排出事業者の廃棄物の処理責任」、「委託基準」、「処理状況確認の(努力)義務」という法律上の責任と義務について触れられています。
 後半では、処理状況確認の具体的方法について言及されていますが、
  • ・処理を委託した産業廃棄物の保管状況や実際の処理工程等について処理業者とコミュニケーションをとりながら確認を行うこと
  • ・公開されている情報について不明な点や疑問点があった場合には処理業者に回答を求めること
 と、従来の通知よりもより具体的な方法が例示されています。
(第3段落)
 当該確認の方法については、廃棄物の処理が適正に行われていることを実質的に確認することができると認められるのであれば、実地に赴いて確認することに限られず、デジタル技術を活用して確認することも可能である。デジタル技術を活用した確認の方法としては、例えば、電磁的記録による許可内容や帳簿等の情報の確認、オンライン会議システム等を用いた処理施設の稼働状況や周辺環境の確認、情報通信機器を使用して産業廃棄物処理業者への管理体制の聴取を行うことなどが考えられる。
※実務的には、通知のこの部分がもっとも重要と言えます。
 「確認の方法については、廃棄物の処理が適正に行われていることを実質的に確認することができると認められるのであれば、実地に赴いて確認することに限られず、デジタル技術を活用して確認することも可能である。」と、「実地確認」以外にも「デジタル技術を活用した確認も可能」であることが明記されているためです。
 「デジタル技術を活用」した具体方法としては、
  • ・電磁的記録による許可内容や帳簿等の情報の確認
  • ・オンライン会議システム等を用いた処理施設の稼働状況や周辺環境の確認
  • ・情報通信機器を使用して産業廃棄物処理業者への管理体制の聴取を行うこと
という3つの手法が例示されています。
 ただし、一言で「デジタル技術を活用して確認」といっても、「確認の対象」や「調査者や聴取者の知識レベル」によっては、得られる情報に雲泥の差が現れますので、具体的な注意点について、別の機会に改めて考察をいたします。
(第4段落)
 また、排出事業者責任の重要性に対する認識や排出事業者と処理業者との直接の関係性が希薄になることがないと認められる場合であって、上記のとおり廃棄物の適正な処理について実質的な確認が可能である場合は、同一の産業廃棄物処理業者に処理を委託している複数の排出事業者が共同してデジタル技術の活用により廃棄物の処理の状況を確認することは妨げられるものではない。
※「同一の産業廃棄物処理業者に処理を委託している複数の排出事業者が共同してデジタル技術の活用により廃棄物の処理の状況を確認することは妨げられるものではない。」という記述は、実務的に重要であり、使い方によっては、先ほどの「第3段落」部分よりも現実的なメリットが大きいかもしれません。
 処理業者と契約している個々の排出事業者は、一般的には相互に連携を取ることはほぼありませんが、「同一企業グループに属している」というくくりであれば、複数の排出事業者が同じ産業廃棄物処理業者に委託しているケースも有り得ますので、その場合は、同一企業グループ内の複数の排出事業者が共同でデジタル技術を活用した処理状況確認をすると、排出事業者と産業廃棄物処理業者の双方にとって、労力削減というメリットがあるからです。

 各論は第5段落と第6段落にまだ続きがありますが、本稿のテーマとは少し外れた内容となりますので、引用と解説は省かせていただきます。

(つづく)
(2024年10月)

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