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「処理状況確認」について(第10回)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前回までは、令和5年3月31日付通知「デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について」の詳細を紹介し、「デジタル技術を活用した処理状況確認も可能である」という環境省の解説を見てきました。
 ご注意いただきたい点は、「可能である」とされているだけで、「デジタル技術を用いた確認」をしておけば「現地確認は一切不要」、とまでは環境省は言っていないことです。
 実務的に重要な 「デジタル技術を用いた処理状況確認」が「使える場面」と「期待できない場面」については、本稿の最終回で触れる予定にしておりますので、今回はひとまず、「令和5年3月31日付通知」の後に発出された「令和6年6月28日付通知」をご紹介します。
 「令和6年6月28日付通知」は、「令和5年3月31日付通知」で示された「活用可能なデジタル技術」の具体的な定義や、「目視規制」「定期検査・点検規制」等の実際にデジタル技術を活用する場面ごとの留意点を解説したものです。

 総論部分は次のとおりです。
デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の 適用に係る解釈の明確化等について(通知)

 「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」(令和4年6月3日デジタル臨時行政調査会決定)及び「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、代表的なアナログ規制7項目(目視規制、定期検査・点検規制、実地監査規制、常駐・専任規制、書面掲示規制、対面講習規制、往訪閲覧・縦覧規制)に関する規制等の見直しが求められている。
 これを受けて、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)等のうち法令上の解釈の明確化を図ることとされている事項等について、「デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について(通知)」(令和5年3月31日付け環循適発第23033125号・環循規発第23033110号環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課長・廃棄物規制課長通知)及び「デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について(通知)」(令和6年3月29日付け環循適発第24032929号・環循規発第2403296号環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課長・廃棄物規制 課長通知)により通知した。今般、環境省において実施した調査(以下「デジタル化検討調査」という。)結果を踏まえ、アナログ規制7項目のうち目視規制及び定期検査・点検規制に係る新たに解釈の明確化を図るべき事項等について、下記のとおり通知する。
 (略)
 後半部分で触れられている「令和6年3月29日付通知」については、本稿のテーマである「処理状況確認」とは無関係ですので、本稿での引用及び紹介は割愛させていただきます。
 各論は3点になりますが、今回は「第1 デジタル化のために活用し得る技術」を見ていきます。
第1 デジタル化のために活用し得る技術
 デジタル化検討調査により、廃棄物処理法等に基づく各種手続のデジタル化に活用し得る技術の調査を行った結果、現時点で、以下の表に示す8類型に分類し得るとの調査結果が得られた。
活用できるデジタル技術 概要
①オンライン会議システム等による現況等の確認 オンライン会議システムなどで送られてくる現地の画像・映像をもとに、手元の図面や資料と照合する
②センサーによるオンラインモニタリング 騒音計や臭気センサーなどのセンサーからの出力を伝送して遠隔で確認する
③点群データによる測量 レーザースキャナーで取得した点群データ(測量結果)をもとに埋立の残余容量を求める
④点群データによる変位の解析 レーザースキャナーで取得した点群データを解析して基礎の沈下や変形を検知する
⑤AIによる画像解析 検査対象物を撮影した画像をAIで分析して亀裂などを検出する
⑥赤外線カメラ画像の解析 赤外線カメラで撮影した画像で擁壁等の劣化状況を検出する
⑦機器の遠隔監視 ポンプなどの設備機器を対象とした遠隔監視システムで稼働状況を監視・確認する
⑧小型無人航空機(ドローン)による現況等の確認 ドローンに搭載したカメラ等から伝送される画像・映像をもとに、手元の図面や資料と照合する

 「『⑤AIによる画像解析』が処理状況確認と何の関係があるのだ?」と疑問に思った方が多いかもしれません。上記の「第1 デジタル化のために活用し得る技術」は、「デジタル臨時行政調査会」が定義した「アナログ規制7項目(目視規制、定期検査・点検規制、実地監査規制、常駐・専任規制、書面掲示規制、対面講習規制、往訪閲覧・縦覧規制)」のうち、廃棄物処理法で関係してくる「目視規制」と「定期検査・点検規制」の2つで使えるデジタル技術の8類型を列挙したものとなります。

(つづく)
(2024年11月)

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