前号に引き続き、2025年4月25日に開催された「第4回 廃棄物処理制度小員会」での審議状況をご紹介していきます。
今回は「PCB 廃棄物の処理に関する制度的措置の検討」について。
PCB 廃棄物の処理に関する制度的措置の検討
資料2-1 「今後のPCB廃棄物等の適正な管理及び処理について」
・PCBとこれまでの経緯
資料2-1 「今後のPCB廃棄物等の適正な管理及び処理について」
・PCBとこれまでの経緯
- ►PCB(ポリ塩化ビフェニル)は絶縁性・化学安定性・高沸点性という利点があるが、人体にとって有害で環境残留性が強いため昭和47(1972)年から製造が中止された。
- ►JESCOによる高濃度PCB廃棄物処理は全国5事業所で2004年より実施。
- ►高濃度PCB廃棄物の処理進捗率は2025年2月末時点で99%超。
- ►2026年3月末でJESCOによる高濃度PCB廃棄物処理事業は終了。
・国際的状況
- ►「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」により、PCBの機器内使用の廃絶は2025年まで、2028年までの適正管理を条約締結国に義務化。
・今後の課題と対応方針
高濃度PCB廃棄物
高濃度PCB廃棄物
- ►2026年3月でJESCO事業終了後に、少量ずつ散発的に発見されるPCB廃棄物への新体制構築が必要。
- ►既存の無害化認定施設を活用し、既設の焼却設備に抜油・解体等の前処理工程を付加する検討を進める。
- ►前処理技術の実証試験で、技術的に確立したものと判断できれば、無害化処理認定制度の対象に高濃度PCB廃棄物を追加する。
- ►無害化設備に負荷する前処理設備の基準追加も併せて行う。
- ►PCB特措法を見直し、覚知後3年以内の高濃度PCB廃棄物の処理義務化などを検討。
低濃度PCB廃棄物
- ►2027年3月が処理期限であるが、その後も現在使用中の製品を廃棄するタイミングで廃棄物として発生することが見込まれている。
- ►処理期限後も適正処理・管理を義務付ける新制度を検討。
所有者の管理強化、廃棄時の届出・届出後の一定期間内の処理の義務付け、処理後の自治体への報告の義務化など。 - ►低濃度PCB含有塗料を使用した建築物・設備については、管理者に塗膜の管理計画及び処理計画の提出を求めることを検討。
PCB廃棄物の今後の対応策
- ►自治体の事務負担軽減の観点から、「PCB廃棄物処理計画策定」やその管理業務等の見直しを行う。
資料2-2 「PCB特措法におけるPCB廃棄物の処理に関する制度的措置の検討について」
・背景と目的
・背景と目的
- ►PCB廃棄物の処理が進展し、JESCO事業も2026年3月で終了予定。
- ►今後も散発的にPCB廃棄物の存在が新たに覚知される可能性があるため、制度の見直しと新たな処理体制整備が必要。
・高濃度PCB廃棄物への対応方針
検討内容
検討内容
- ►発見後の届出と、一定期間内処理の義務化
- ►現行法の「処理期限」の廃止
- ►無害化処理認定制度の対象に高濃度PCB廃棄物を追加
- ►無害化設備に付加する高濃度PCB廃棄物の無害化処理基準
低濃度PCB廃棄物・使用製品の対応方針
検討内容
検討内容
- ►所有者に管理状況の届出義務付け
- ►管理基準の制定(紛失・飛散防止)
- ►廃棄する際には、届出・一定期間内の処分の義務付け
- ►PCB含有塗膜など建築物・設備について管理計画の策定を義務付け
・自治体の事務負担経験等に関する検討
検討内容
検討内容
- ►現行法の「PCB廃棄物基本計画」の策定や「PCB廃棄物の保管及び処分の状況の公表義務」の廃止
- ►JESCO法の関係規定の見直し
- ►処理責任者が不存在となったPCB廃棄物への行政代執行規定の創設
PCB 廃棄物の処理に関する制度的措置の検討に関する論点のまとめ
- ・委員からは、環境省案に対する異論は特に出ませんでした。
- ・「低濃度PCB廃棄物覚知時の届出等、都道府県の事務負担が増えることになるため、それへの配慮や支援が必要」という指摘が複数の委員からありました。
(以下、筆者の私見)
- ・高濃度PCB廃棄物については、99%以上が処理済みであるため、新たにその存在が発覚した際には、現行法のJESCOによる処理ではなく、環境省の構想のとおり、廃棄物処理法に基づく無害化認定を受けた民間事業者による処理が適切と思いました。
- ・低濃度PCB廃棄物の新たに覚知された場合については、環境省の構想のとおりに、都道府県へ届出を義務付ける必要があると考えますが、委員からの指摘にもあったとおり、人員削減が年々進む都道府県の事務負担は確実に増すことになるため、それへの配慮が不可欠と言えます。
(つづく)
(2025年07月)