行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)
メールマガジン読者の皆様 初めまして。
今回から「使える通知・疑義解釈」というテーマで、当メールマガジンに連載をさせていただくことになった尾上雅典です。よろしくお願いします。
通知の単なる解説にとどまらず、実務に応用できそうな面、あるいは誤解してはいけない内容に焦点を当て解説していこうと思っておりますので、お楽しみいただければ幸いです。
今回は、一問一答形式の質疑がまとめられている「平成5年3月31日付衛産36号通知」の中から、「施設の管理形態」を取り上げます。
※解説
「排出事業者が設置した産業廃棄物処理施設を、排出事業者以外の者が維持管理することの可否」に関する疑義解釈です。
(2)では、Bが誰の産業廃棄物を処理するのかが明確に書かれていませんが、答の「許可が必要」から推測すると、BではなくAの産業廃棄物を処理する前提と考えられます。
また、「産業廃棄物処理施設の賃貸借」では実務に結びつけるのが困難ですので、質疑の内容を換骨奪胎し、「排出事業場内での廃棄物処理を他者が行うケース」に置き換えて考えることにします。
(1)の直接雇用という部分の解釈を広げ、排出事業者の処理責任が明確にできるのであればという条件付きで、直接雇用でなくとも良いとしたのが、「規制改革通知」の「第三 企業の分社化等に伴う雇用関係の変化に対応した廃棄物処理法上の取扱いの見直し」です。
ただし、実態としては、構内での廃棄物管理作業を、他社と労働者派遣契約をわざわざ締結し、雇った人員を排出事業者が直接指揮監督しているケースというのはほとんど無いのではないでしょうか?
そのため、現実にはほとんどの現場で、(2)のように下請業者が独自に作業を取り仕切る状態だろうと思います。
この場合、排出事業者が所有する敷地内とはいえ、排出事業者自身は廃棄物処理にタッチしておらず、下請業者が排出事業者という他者の産業廃棄物の処理していることになるため、廃棄物処理法の原則どおり、下請業者には業許可が必要となります。
もちろん、単なる「清掃」や「場内の整理整頓」を委託するだけならば、「廃棄物処理の委託」ではありませんので、通常の請負契約の概念どおりに行えば問題ありません。
今回の疑義解釈に該当する具体例を一つ挙げると、
ある製品の製造工場において発生する廃プラスチック類(包装)を、容量圧縮のため工場内で圧縮しているが、その圧縮作業を、下請業者に委託しているというケースです(下請業者とは労働者派遣契約を結んでいないものとします)。
この場合、圧縮機自体は製造事業者の所有物ではありますが、
廃プラスチック類の圧縮作業を、他者である下請業者に委託(請負契約)していることになりますので、厳密には、下請業者には産業廃棄物処理業許可が必要となります。
(2018年07月)