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「野焼き」

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BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

今回で3回目となる「違反事例で考える」。初回、2回と不法投棄事件をテーマに、違反条項、罰則、行政処分、それも許可に関する処分、環境に関する処分について検討してみることで、一つの事件を深掘りできることがわかりました。今日は、どんな事件について見ていくのでしょうか。センセ。
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はい、それでは早速今回の記事を見ていただきましょうか。ケース1です。
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出典:2020年4月6日 循環経済新聞
ケース1 循環経済新聞切り抜き

これはいわゆる「野焼き」って行為ですよね。違反条文は記事に既に掲載されているとおり第16条の2ね。
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最近の新聞は親切で、条文まで掲載するようになっちゃって、リサちゃんへのテスト問題としてはやりにくくなっちゃったなぁ。じゃ、ここでちょっとひねった質問。この記事では「焚き火(たきび)をしているという通報」ってあるけど、焚き火も廃棄物処理法違反になっちゃうのかな?
♪たき火だ、たき火だ、落ち葉焚き、あったろうか、あたろうよ~ですね。木枯らしの吹いているときのたき火はうれしいですね。
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加えて、その中にお芋なんかあれば最高・・・いやいや、誤魔化されないぞ。
だめだったか。降参。わかりません。違反にならない「たき火」と、違反になる「野焼き」の区別、教えて下さい。
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ちょっとその前に、本論から外れるけどおことわりを入れておくね。一般的には「野焼き」「野焼き」って言っているけど、本来の「野焼き」は、春先に雑草がはびこらないように、また、わらびなどがよく育つように枯れ草などを焼くのを「野焼き」と呼んでいた。
奈良の若草山とか山口の秋吉台のの山焼きは有名ですよね。風物詩にもなっている。
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そうだね。でも、廃棄物をその辺で燃やす行為が問題視された平成の一桁台頃から、正式な焼却炉を使わずに廃棄物を焼却する行為も、一般的に「野焼き」と呼ぶようになっちゃった。そんな訳で、ここでも、「野焼き」と使わせていただくことにします。
それじゃ、条文を見てみようか。

(焼却禁止)
第十六条の二 何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない。
一 一般廃棄物処理基準、特別管理一般廃棄物処理基準、産業廃棄物処理基準又は特別管理産業廃棄物処理基準に従つて行う廃棄物の焼却
二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却
三 公益上若しくは社会の慣習上やむを得ない廃棄物の焼却又は周辺地域の生活環境に与える影響が軽微である廃棄物の焼却として政令で定めるもの

「野焼き」画像2
図1 たき火のイメージ

第16条の不法投棄は例外は規定していない。でも、この「不法焼却」は例外規定があるんだ
その「例外」が1号、2号、3号ね。どれどれ・・・。1号は「処理基準に従つて行う焼却」って、これは当然よね。じゃ、次。「二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却」って、これはどんなものがあるんですか?そして3号の「やむを得ない廃棄物の焼却」とか「生活環境に与える影響が軽微」とか出てくるけど、「やむを得ない」とか「軽微」とかなると「程度問題」、「主観の相違」、になって公平性を欠くんじゃないですか。
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そうだねぇ。そんなこともあり、国はこの条文を追加した時には、詳細な施行通知を発出しているんだ。
施行通知って、法令を運用するときには、こういうふうにしてくださいって、制度がスタートしたときに発出される通知ですね。
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よく勉強してるね。5年間の経験は無駄じゃなかったね。じゃ、まず3号に出てくる「政令」も見ておこうか。

政令第14条(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)
第十四条 法第十六条の二第三号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。
一 国又は地方公共団体がその施設の管理を行うために必要な廃棄物の焼却
二 震災、風水害、火災、凍霜害その他の災害の予防、応急対策又は復旧のために必要な廃棄物の焼却
三 風俗慣習上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却
五 たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの

この政令で規定する「例外」も含めて、平成12年9月28日付けの通知の趣旨を説明しておこうか。
そもそも、不要な物に火を付けて燃やしてしまう行為は太古の昔からやられてきた。
いわゆる「ごみ焚き」って行為よね。私も元彼からのラブレター、何通燃やしたことか。
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そんな行為まで警察が出動して捕まえるってことまではないけれど、不法投棄は捕まるからと火を付けて燃やす悪質な行為が急増しちゃったんだね。そこで廃棄物を燃やす行為は「原則禁止」とし、一部例外規定を設定したんだね。
まず、法律の第2号で規定している「二 他の法令又はこれに基づく処分により行う廃棄物の焼却」としては、森林病害虫防除法の駆除命令にしたがって病害虫が付着している樹皮を焼却するとか、家畜伝染病予防法で規定している「患畜の焼却」なんかが考えられる。
政令1号の国や県、2号の災害復旧はわかるけど、課題は3号からね。
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そうだねぇ。以前、「宗教上必要」という理由で「御焚上げ(おたきあげ)」と称して、故人の遺物を大々的に野焼きして検挙された例があったなぁ。
それに「農業を営むためにやむを得ない」廃棄物の焼却と言うのも難しいわね。
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国は前述の平成12年9月の課長通知では、いくら「凍霜防止」とは言え、廃タイヤを焼却するような行為はダメだって言ってるね。
そしていよいよ5号の「たき火」程度ね。
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リサちゃんの元彼のラブレター焼却事件も、まぁ、このランクの話でしょうね。元彼のラブレターの量がダンプ一杯ってことはないでしょうから。
結局、程度問題っていうことになっちゃうわよね。
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それはそのとおりなんだけど、前述の通知でも「生活環境保全上の支障」という文言を使っている。例示にもあるように廃タイヤやプラスチック製の漁網を燃やして、黒い煙もくもくなんて状態は「軽微な焼却」とは言えないでしょうね。
と、言うことは記事の事案は、「たき火をしている」とは言え、実態は消防署に通報される位だから、大々的に黒煙もくもくという状態だったのかな。
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多分、そうでしょうね。さらに記事では、その後立入検査を行って第16条の2に規定する焼却行為を行っていた、とあるから、残念な事ながら廃棄物を焼却していたんでしょうね。
「野焼き」については別の事件もあるよ。これも見てください。ケース2。
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出典:2020年9月14日 循環経済新聞
ケース2 循環経済新聞切り抜き

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さらにもう一つ。ケース3も見てね。
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出典:2015年10月17日 新潟日報
ケース3 新潟日報切り抜き

ケース2の岡山の事件はケース1の三重県の事件と同じく業者の違反。ケース3は県職員が違反していた事件ですね。どれも第16条の2違反ですね。
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はい、そのとおり。じゃ、行政処分について確認していきましょうか。
えーと、ケース1の三重県、ケース2の岡山県の事件ともに許可業者の違反だったので、どちらも業許可関係は「取消」。環境関係では改善命令についても、措置命令についても記事では触れていませんね。
改めて考えてみると、「野焼き」事案で改善命令や措置命令って想定できるんですか?
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するどいところを突いてきたね。一応、前述の施行通知では「処理基準を遵守しない焼却として改善命令、措置命令は可能」と書いてある。ただ、現実的には、まず「無い」ね。
どうしてですか?国は「可能」って言ってるんでしょ?
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それは現実的な「手続き」の課題があるんだ。改善命令にしても措置命令にしても、現場の監視員(行政担当職員)が即座に発せられるものじゃない。
そりゃ、命令をかけられる方も重大事件ですから、一担当者の独断でやられたんじゃ、困るわね。
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たいていの場合は、役所の課長や部長の決裁を取って初めて発出できる。不法投棄なら投棄された物が継続してそこに存在しているけど、野焼きの場合は燃えて無くなる。もちろん、野焼きしたという事実や燃え殻が消えて無くなる訳じゃないけど。だから、「野焼きしていました」と書類に仕上げて、上司の決裁を取っているうちに燃え切ってしまう。燃えているうちは黒煙もくもくで生活環境保全上の支障はあるけど、決裁が降りる時点では生活環境保全上の支障はなくなってしまっている。だから、野焼きに関しては改善命令にしても措置命令にしても「そぐわない」ってなっちゃうね。
もちろん、反復継続して野焼きを繰り返しているような人物に対しては、それ相応の対応は取るけどね。
「それ相応の対応」ってなに?言葉だけなんじゃないでしょうね。
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行政処分は「環境」だけじゃなかったよね。「業許可」に関しては三重県も岡山県も最も重い「取消」としている。そして、最後に残るのが刑事処分。罰則だね。第16条の2違反の罰則は?
そうだ、そうだ。罰則の確認がまだだったわ。えーと。これかな。

第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
十五 第十六条の二の規定に違反して、廃棄物を焼却した者

へぇ。野焼きも不法投棄と同じく第25条。最高刑懲役5年かぁ。重いわねぇ。
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それだけじゃないよ。ケース3の新潟県の事件を見て下さい。県職員とともに「県」、つまり、職員が所属していた「組織」も書類送検されている。
ほんとだ。「両罰規定により県も送検された」って書いてるわ。ところで、両罰規定ってなに?
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では、その罰則、廃棄物処理法では第32条を見てみようか。

第三十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号に定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
社員が廃棄物処理法違反をしたら会社も罰するって規定ですね。そりゃ、もっともっていえばもっともな話よね。会社の指示により違反行為をやらせられて社員だけ罰せられて、会社がお咎め無しじゃ筋が通らない。
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ちなみに、現在の野焼きに関する両罰規定での罰金の最高額はいくらだと思う?
100万円位かなぁ。いや、罰則25条では最高刑懲役5年罰金1000万円だったわね。これより安い訳はないから、1000万円か。
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ぶっぶー。残念。そんなもんじゃないよ。平成22年改正まででも1億円。22年改正で3倍に上げられて現在では最高3億円。これが、不法投棄や野焼きの両罰規定の罰金額なんだ。
(○_○)潰れるわね。
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じゃ、今回のまとめをしてみようか。
1.違反はいわゆる「野焼き」。違反条項は第16条の2。
2.ただし、野焼きにはいくつかの例外規定有り。
3.考えられる行政処分として「業許可」については、取消や事業停止処分。
4.「環境」についての行政処分である改善命令、措置命令は理論としてはあり得るが、現実的には「まず無い」。
5.罰則は第25条第15号。最高刑懲役5年、罰金1000万円。
6.両罰規定があり、法人では最高3億円と規定。
違反条項、罰則、行政処分。行政処分は許可と環境という2つの要素について整理すると、事案の全体像が見えてくるんですね。
それにしても、自分の会社ではこんなことが起きないよう、巻き込まれないようにしなくちゃね。
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(2021年07月)

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