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一般廃棄物、産業廃棄物の区分

Author

BUN 環境課題研修事務所
長岡文明 氏

 「初めて廃棄物処理に関係する」という方々を対象に「そもそも、なんで、こんなルールになっている?」という視点で廃棄物処理を眺めてみるという、おおらかな感じでお付き合いいただきたいコラムです。
 前回は「廃棄物の区分」について話をしました。今回はこれよりちょっと入り込みまして「一般廃棄物、産業廃棄物の区分」について勉強していきたいと思います。
 とは言っても、「一般廃棄物」を個別に知ることは難しいのです。それはどうしてか?
 そもそも、廃棄物処理法で一般廃棄物の定義を次のように規定しているからなのです。
 (定義)
 第二条 
 2 この法律において「一般廃棄物」とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう。

 と、このように「一般廃棄物とは産業廃棄物以外の廃棄物」なので、まずは、産業廃棄物を個別具体的に勉強して、それ以外の廃棄物が一般廃棄物だとなります。
 昭和40年代に廃棄物処理法を制定した先達のお話をお聞きすると、「以外の」というよりは、むしろ、産業廃棄物の方が特殊な存在であり、世の中の全ての廃棄物から、個別具体的に規定する産業廃棄物を取り除いたものが「一般廃棄物」という概念であったようです。

一般廃棄物、産業廃棄物の区分1

<世の中の全ての廃棄物から産業廃棄物を取り出していき、残った物が一般廃棄物、のイメージ図>


 と言うことなので、まずは産業廃棄物から勉強していくことになります。
 結論を言うと産業廃棄物は個別具体的に20種類が規定されています。
 それが、この表です。

一般廃棄物、産業廃棄物の区分2

 左11品目は「業種指定」「指定業種」というものはありません。一方、右9品目には「業種指定」「指定業種」があります。この「業種指定」「指定業種」についてお話しします。
 前回、「事業活動が伴って排出されていても一般廃棄物」という「事業系一般廃棄物」の話をしました。このことが「業種指定」「指定業種」につながります。
 まずは根拠となる法令を見ていただきましょう。(例示となる箇所のみ抜粋)
 法律(定義)
 第二条 
 4 この法律において「産業廃棄物」とは、次に掲げる廃棄物をいう。
 一 事業活動に伴つて生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物
 政令(産業廃棄物)
 第二条 法第二条第四項第一号の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
 四 食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物(動植物性残さ)

 このように産業廃棄物は法律と政令で規定しているのですが、まず、法律を見ると「燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類」の6種類が示されていて、こちらは「事業活動に伴つて生じた」場合は、どのような業種から出てきたとしても、それは産業廃棄物になります。
 ところが、政令第2条第4号で規定している「動植物性残さ」が産業廃棄物になる業種は「食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業」の3業種に限定されています。
 ですから、たとえばりんごジュースを製造している工場から、りんごの絞り滓が廃棄物として排出される場合は「食料品製造業から排出される動植物性残さ」ですので産業廃棄物となります。
 ところが、旅館やホテルで客が食べ残しした物が廃棄物になって排出、スーパーマーケットやコンビニで売れ残った惣菜が廃棄物になって排出された場合、旅館やホテルは宿泊業、スーパーマーケットやコンビニは販売業ですね。食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業ではありませんね。したがって、旅館の客の食べ残し、スーパーマーケットの惣菜の売れ残り、これはいくら「事業活動に伴つて生じた」場合であっても一般廃棄物となります。これが事業系一般廃棄物です。
 逆に、食料品製造業、医薬品製造業、香料製造業から排出される場合は産業廃棄物になりますね。この業種を「指定業種」と呼称しています。また、「動植物性残さは業種指定のある廃棄物である」などのように使用します。なお、「業種指定」「指定業種」という文言は法律で規定しているものではなく、昔から慣用的に呼ばれているもので、私は正確に「指定排出形態」と呼んだ方がいいと思っているのですが、その「排出形態」のほとんどが「業種」であるので昔から「指定業種」や「業種指定」と呼称しています。
 ちなみに、「業種」でない規定もいくつかありまして、たとえば産業廃棄物20種の一つである「ばいじん」は「大気汚染防止法やダイオキシン特措法に規定する焼却施設において発生するばいじんであつて、集じん施設によつて集められたもの(これでも簡略表現)」という規定の仕方です。
 よって、煙突についた「煤(すす)」などは、産業廃棄物の「ばいじん」には該当しませんが、逆に「大気汚染防止法規定する焼却施設の集じん施設によつて集められたばいじん」なら、どのような業種の事業場であっても産業廃棄物の「ばいじん」に該当します。
 「木くず」も「建設業」「木材製造業」等の指定業種もあるのですが、平成19年の政令改正により、「現役時代にパレットであった木くず」は、業種を問わず産業廃棄物になります。
 政令(産業廃棄物)
 第二条 法第二条第四項第一号の政令で定める廃棄物は、次のとおりとする。
 二 木くず(建設業に係るもの(工作物の新築、改築又は除去に伴つて生じたものに限る。)、木材又は木製品の製造業(家具の製造業を含む。)、パルプ製造業、輸入木材の卸売業及び物品賃貸業に係るもの、貨物の流通のために使用したパレット(パレットへの貨物の積付けのために使用したこん包用の木材を含む。)に係るもの並びにポリ塩化ビフェニルが染み込んだものに限る。)

 実は、このことが廃棄物処理法上、大きな課題の一つでもあるのです。
 一般廃棄物と産業廃棄物は、その処理業の許可が違います。
 だから、産業廃棄物の許可を持っていても一般廃棄物は扱えません。
 「木くず」はバイオマスエネルギーとして再生活用される時も多いのですが、前述の通り「建設業(他数業種)」から排出された場合は産業廃棄物なのですが、街路樹や果樹園の剪定枝はこれには該当しないために一般廃棄物なるんです。よって、こちらの木くずも扱いたいとなると一般廃棄物処理業の許可も必要になるってことが出てしまうわけです。
 この話は、また改めて。

(2025年01月)

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