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電子マニフェストと産廃契約書の改正で、排出事業者は何をするか?~廃棄物処理法施行規則の改正

Author

環境コンサルタント
安達宏之 氏

 2025年4月22日、廃棄物処理法施行規則が改正されました。
 改正のポイントは2つあります。1つは、電子マニフェストの項目追加です。もう1つは、産業廃棄物の委託契約書の記載事項の追加です。

 筆者は排出事業者の企業関係者と仕事をすることが多いのですが、本改正について知らない方が少なくありません。電子マニフェストの改正については、直接、排出事業者が新たに対応をしなくとも違反になることはないものの、産業廃棄物の委託契約書の記載事項の改正については、新たな対応をしなければ違反に陥る排出事業者も出てきます。

 改正規則の概要は、次の図表の通りです。

改正廃棄物処理法施行規則の概要と排出事業者の対応

■改正された法令名:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則
■公布年月日等: 2025年4月22日環境省令第15号
1 電子マニフェストの項目追加
  • 〇規制対象:処分受託者➡排出事業者ではない
  •  
  • 〇項目が追加される事項
    ・受託した産業廃棄物について最終処分が終了するまで又は再生を行うまでのすべての処分について、各処分ごとに、情報処理センターに次の事項を報告する
    ① 処分者の氏名又は名称及び許可番号
    ② 処分事業場の名称及び所在地
    ③ 処分方法
    ④ 処分方法ごとの処分量(当該処分量を的確に算出できると認められる方法により算出される処分量を含む。)
    ⑤ 処分後の産業廃棄物又は再生された物の種類及び数量(当該数量を的確に算出できると認められる方法により算出される数量を含む。)
  •  
  • ○施行日:2027年4月1日
2 産業廃棄物の委託契約書への法定記載事項の追加
  • 〇規制対象
    ・排出事業者が次の要件に該当する場合は、契約書の法定記載事項を追加する。
    ①PRTR対象事業者である(化管法の第一種指定化学物質等取扱事業者である)
    ②委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質が含有・付着している
    ※化管法により排出量・移動量を把握しなければならないものに限る
    ➡規制対象は、PRTR届出の対象事業者であり、かつ、化管法に基づき排出量・移動量を把握した対象物質が産業廃棄物に含まれる場合
  •  
  • 〇契約書に追加が義務付けられる法定記載事項
    ①その旨
    ②産業廃棄物に含有・付着する対象物質の名称及び量又は割合
  •  
  • ○施行日
    2026年1月1日
    ※ただし、経過措置として、施行時の際、現に締結されている契約書については、契約の更新までの間は今回の記載事項を追加しなくてもよい(改正省令附則第2条)
    ➡産業廃棄物処理業者との契約更新時までに追加する

 1つ目の改正点である電子マニフェストの項目追加では、産業廃棄物の処分受託者、つまり産業廃棄物処分業者が規制対象となります。排出事業者ではありません。

 今後、電子マニフェストの入力画面が変更され、処分業者が入力すべき項目が追加されることになります。

 入力すべき項目は、処分者の氏名又は名称及び許可番号、処分事業場の名称及び所在地、処分方法、処分方法ごとの処分量、処分後の産業廃棄物又は再生された物の種類及び数量となります。
 処分業者は、受託した産業廃棄物について最終処分が終了するまで又は再生を行うまでのすべての処分について、各処分ごとに、これらの項目を入力しなければなりません。

 これまで排出事業者は、処理委託した産業廃棄物の処分方法、再資源化の有無、再資源化の量、最終処分の量がわかりませんでしたが、こうした項目追加によって、排出事業者は最終処分までの処理フローを確認することができるようになります。
 施行日は2027年4月1日です。

 次に、2つ目の改正点である産業廃棄物の契約書への法定記載事項の追加とは、産業廃棄物の処理を委託する際の委託基準の改正となります。
 産業廃棄物を委託する側である排出事業者が遵守すべきものですので、規制対象は排出事業者となります。

 ただし、すべての排出事業者が規制対象となるわけではありません。
 化管法のPRTR対象事業者であり、かつ、委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質(化管法により排出量・移動量を把握しなければならないものに限る。)が含有・付着している場合に限られます。
 つまり、規制対象は、PRTR届出の対象事業者であり、かつ、化管法に基づき排出量・移動量を把握した対象物質が産業廃棄物に含まれる場合となります。
 これに該当する場合は、契約書にその旨とともに産業廃棄物に含有・付着する対象物質の名称及び量又は割合を契約書に追加記載しなければなりません。

 化管法の第一種指定化学物質とは、人や生態系への有害性があり、環境中に継続して広く存在する物質です。今回の改正では、こうした化学物質の情報を産業廃棄物処理業者に提供することにより、処理の際にこれら有害な化学物質が環境中に流出しないようにすることを狙っているのです。

 施行日は、2026年1月1日となります。
 ただし、経過措置として、施行時の際、現に締結されている契約書については、契約の更新までの間は今回の記載事項を追加しなくてもよいことになっているので、実際は、産業廃棄物処理業者との契約更新時までに追加することになります。

 このように、排出事業者の視点から今回の改正を見ると、電子マニフェストの改正箇所については直接の対応は不要であるものの、契約書の改正箇所については、PRTRの届出対象事業者であれば対応が求められる場合があります。
 環境省は、施行までに、WDSガイドラインを改定するなど、実際の対応方法を今後提示してきますので、対象事業者はそうした動きを見落とさないようにしましょう。

◎「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令(案)について」(環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課)
⇒ https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/download?seqNo=0000286148

◎「「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」に対する意見募集の結果について」(環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課)
⇒ https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/1040?CLASSNAME=PCM1040&id=195240109&Mode=1

(2025年06月)

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