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ネット・ゼロで洋上風力発電と陸上風力発電の促進へ ~改正再エネ海域利用法と改正環境アセス法が成立

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 2025年6月、再エネ海域利用法と環境アセス法の2つの法律が改正されました。(前者は6月11日、後者は6月20日公布)

 いずれも、主に風力発電に関する改正です。
 日本政府は、2025年2月に閣議決定されたエネルギー基本計画により、2050年のネット・ゼロ(脱炭素/カーボンニュートラル)を目指して、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入することを決めました。現在、再生可能エネルギーの電力量の比率は全体の21.8%ですが(2022年度)、これを2040年には4~5割程度にすることを目指しています。

 こうした中で風力発電の普及は、再生可能エネルギー拡大の有望な方策の一つとなります。
 特に、洋上風力発電は、主力電源化の「切り札」と呼ばれています。そこで、再エネ海域利用法の改正では、現行法に基づく領海や内水における案件形成に加え、わが国の排他的経済水域(EEZ)における案件形成に関する規定を定めました。

 また、風力発電は、太陽光発電とともに、普及が期待される再生可能エネルギーである一方、自然環境、景観、生活環境等の観点から地域で紛争が生じるなどの課題もあります。大規模風力やメガソーラーの開発規制を定める条例も各地で制定されています。
 2025年3月、中央環境審議会から「今後の環境影響評価制度の在り方について(答申)及び風力発電事業に係る環境影響評価の在り方について(二次答申)」が出されました。陸上風力発電に関する措置の強化を含めた環境アセス制度の見直しの考え方が打ち出され、その一環として、環境アセス法が改正されました。

再生海域利用法と環境アセス法の改正概要は、次の図表の通りです。

再エネ海域利用法と環境アセス法の改正概要

■改正再エネ海域利用法
  • ○改正法の正式名称:
    海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律(令和7年法律第59号)
  • ○施行日: 公布日から1年を超えない範囲で政令で定める日
No 項目 改正点
1 題名の改正 題名を「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に関する法律」に改める。
2 EEZ内の許可制度の創設
  • ・経済産業大臣は、排他的経済水域(EEZ)に「海洋再生可能エネルギー発電設備設置募集区域」を指定。
  •  
  •  ○日本のEEZの概念図 日本のEEZの概念図 (出典:海上保安庁ホームページhttps://www1.kaiho.mlit.go.jp/ryokai/gainenzu.html)
  •  
  • ・経済産業大臣・国土交通大臣は、発電事業者と利害関係者等の協議会を組織し基準を満たせば、発電設備の設置を許可
3 環境アセス法の特例措置の創設 募集区域等の指定の際に環境大臣が調査を行う一方、事業実施の際には環境アセス法の相当する手続を適用しない
■改正環境アセス法
  • ○改正法の正式名称:
    環境影響評価法の一部を改正する法律(令和7年法律第73号)
  • ○施行日: 公布日、公布日から1年又は2年を超えない範囲で政令で定める日
No 項目 改正点
1 建替事業を対象としたアセス手続の見直し
  • 既設工作物を除却・廃止し、同種の工作物を同一又は近接した区域に新設する建替事業は、位置が大きく変わらないことから、事業実施想定区域に関する周囲の概況などの調査を不要とする。
  • ・建替事業に関する建替配慮書では、既存事業の環境影響を踏まえ、新設する工作物についての環境配慮の内容を明らかにする。
2 アセス図書の継続公開
  • ・環境大臣は、事業者による縦覧等の期間後も、アセス図書を入手した上で、インターネットにより継続公開することができる。
3 対象となる風力発電の対象拡大 ※本改正には含まれていないが、以下の件を改正予定。
  • ・風力発電事業は、現行の法対象規模未満(3.75万kW未満)の事業であっても、立地によっては、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるため、例えば、第二種事業の規模要件を引き下げる

 改正再エネ海域利用法では、法律名を改めるとともに、排他的経済水域(EEZ)内の許可制度を定めました。
 EEZとは、領海の基線から200海里(約370km)までの海域を指します(領海を除く)。沿岸国には、天然資源の開発等の主権的権利や施設設置等の管轄権などがあります。
 改正前の本法では、領海や内水における案件形成に関する規定を定めていましたが、これに加えて今回の改正法では、EEZにおける案件形成に関する規定を整備しました。

 具体的には、経済産業大臣が、EEZに「海洋再生可能エネルギー発電設備設置募集区域」を指定し、経済産業大臣・国土交通大臣が、発電事業者と利害関係者等の協議会を組織し、基準を満たせば、発電設備の設置を許可します。

 また、経済産業大臣による募集区域等の指定の際に環境大臣が海洋環境の保全の観点から調査を行います。これにより、発電事業者が実際に事業を行う際には、環境アセス法の相当する手続を適用しないという環境アセス制度の特例措置を設けました。
 発電事業を効率的に行うことを意図したものといえるでしょう。

 改正環境アセス法は、①2013年施行の前回改正法から10年を経過したことを踏まえた改正と、②陸上風力発電の導入促進の2点に関連する改正が行われました。

 本法は1997年に成立したものであり、四半世紀が経過し、アセス手続の対象となる工作物も建替えの時期を迎えるようになりました。しかし、本法には事業の位置や規模が大きく変わらない建替えに対する規定がなく、その合理化が課題となっていました。

 そこで改正法では、既設工作物を除却・廃止し、同種の工作物を同一又は近接した区域に新設する建替事業は、位置が大きく変わらないことから、事業実施想定区域に関する周囲の概況などの調査を不要としました。建替事業に関する建替配慮書では、既存事業の環境影響を踏まえ、新設する工作物についての環境配慮の内容を明らかにすることになりました。

 また、環境大臣は、事業者による縦覧等の期間後も、アセス図書を入手した上で、インターネットにより継続公開することができるようにしました。

 さらに、本改正法には含まれていませんが、前述の答申では、対象となる風力発電の対象拡大も求めています。
 具体的には、風力発電事業は、現行の法対象規模未満(3.75万kW未満)の事業であっても、立地によっては、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるため、例えば、第二種事業の規模要件を引き下げることにしています。

 以上の通り、再エネ海域利用法と環境アセス法の改正では、行政が一定の関与を行いつつ、海域及び陸域における円滑な風力発電事業の促進を行おうとしています。
 改正法に基づく発電事業に参加しない企業にとっては直接規制等が及ぶような改正ではありませんが、2050年カーボンニュートラルに向けた有力な選択肢のひとつを増えるものと期待されています。

◎「「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました」(経済産業省)
⇒ https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240312006/20240312006.html

◎「環境影響評価法の一部を改正する法律案の閣議決定について」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/press_04574.html

(2025年08月)

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