産業廃棄物処理場へ行くと、リチウムイオン電池による火災の話がしばしば出てきます。国の統計でも火災の急増が示されていますが、それだけリチウムイオン電池を使用している製品が増えるとともに、その危険性や法的規制を知らずに混入させる排出事業者が多いのでしょう。
リチウムイオン電池は、充電することで繰り返し使用でき、小型の電池でありながら、エネルギー効率が高く、スマートフォン、モバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホン、電動アシスト自転車など、実に様々な製品に使用されています。
リチウムイオン電池による使用時や廃棄時の火災を防止するとともに、電池に含まれるリチウム、コバルト、ニッケルなどの重要鉱物資源を確保するために、2025年12月23日、「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」が関係省庁で連携して策定されました。
このパッケージの概要は、次の図表の通りです。
リチウムイオン電池総合対策パッケージ
※下線は新たな取組。赤字は引用者
| リチウムイオン電池起因の重大火災事故ゼロを目指すとともに、国内に十分なリサイクル体制を構築する(2030年まで) | ||
| 1 | 国民・事業者への周知啓発 |
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| 2 | 製造・輸入・販売時の対策 |
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| 3 | 使用時の対策 |
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| 4 | 廃棄時の対策 |
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| 5 | 処理・再利用の対策 |
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出典:「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」(リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議)
(https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/pdf/04_taisaku_file.pdf)
及び「リチウムイオン電池総合対策パッケージ(個別施策集)」(リチウムイオン電池総合対策関係省庁連絡会議)
(https://lithium.env.go.jp/recycle/waste/lithium_1/pdf/05_kobetsusesaku_file.pdf)
をもとに作成
リチウムイオン電池やそれを内蔵する製品を廃棄しようとする排出事業者にとって、このパッケージのポイントは、図表No.4及びNo.5の赤字と言えるでしょう。
まず、資源有効利用促進法に基づく製造事業者等が実施すべき指定再資源化製品の自主回収・再資源化の促進に関する施策です。
令和7年5月公布の改正資源有効利用促進法により、令和8年4月より、リチウムイオン電池の自主回収・再資源化を促進するため、廃棄物処理の特例条項が設けられます。主務大臣の認定を受けた自主回収・再資源化を行うメーカー等は、収集・運搬・処分において廃棄物処理法の業許可が不要となります。
また、従来の回収対象はリチウムイオン電池単体でしたが、リチウムイオン電池を容易に取り外すことができない一体型製品である電源装置(モバイルバッテリー)、携帯電話用装置(スマートフォン等)、加熱式たばこデバイスの3品目も対象製品に追加されました。
排出事業者は、今後、この認定を受けるメーカー等の再資源化ルートに対象となる廃棄物を引き渡していくとよいでしょう。
また、他の廃棄物への混入を防止するための廃棄物処理法に基づく制度的対応も注目されます。
今後、政省令等の改正により、①収集運搬や保管時に他のものと区分する(基準策定)、②産業廃棄物の委託契約においてリチウムイオン電池等の含有の有無を明確にするための仕組みを構築することが予定されています。
パッケージの「個別施策集」を見ると、リチウムイオン電池を処理しようとするときは、委託契約書やWDS、またマニフェストにその旨を明示させるようです。
さらに、不適正なスクラップヤード事業者への規制も強化されます。これは、廃棄物処理法の改正により実施されます。
具体的には、廃棄物に該当しない使用済リチウムイオン電池や雑品スクラップ等を対象に、規制対象となる物品の保管や処分を行うスクラップヤード事業者などに対して、事業の事前審査制度や罰則が強化される見込みです。
排出事業者の中には、自らの産業廃棄物を産業廃棄物処理業者に渡した後のことについて無頓着な者も少なくありません。これは、廃棄物処理法の排出事業者責任の観点から極めて問題があり、委託基準違反等の重大な違反行為でもあります。
同時に、排出事業者は、「廃棄物は消えるものではない」ことへの認識について、社内で徹底を図るべきです。その先の処分場等において火災などのリスクがあり、そこで働く人々がいるということを継続的に社内周知させる取組みが求められます。
◎「リチウムイオン電池総合対策パッケージの策定について」(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/press_02192.html
(2026年03月)


