環境コンサルタント
安達宏之 氏
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新しい環境法が制定され、または既存の環境法が改正される一番の理由は、社会で実際に発生した健康被害や環境汚染などの「問題」の再発防止を図るためと言えるでしょう。
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例えば、平成23年施行の改正大気汚染防止法及び水質汚濁防止法では、ばい煙や排水の測定結果の改ざん等に罰則が設けられましたが、これは実際に測定結果を改ざんする事案が次から次へと明るみに出たことを受けたものです。
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現在、国会では、改正労働安全衛生法案が審議されています。<br>
法案の内容は多岐に渡りますが、特に環境規制に関わる事項としては、「化学物質管理のあり方の見直し」が最も注目されます。
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この改正事項は、平成24年に大阪の印刷工場で化学物質の使用によって「胆管がん」を発症したとして労災請求があり、大きな社会問題となった「胆管がん問題」がきっかけでした。
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今回の改正も、実際に職場で生じた健康被害の再発防止のための措置なのです。
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胆管がんの労災事案では、安衛法の特別規則で規制されていない化学物質の職場でのばく露が原因とされています。<br>
これを踏まえて、化学物質のリスクを事前に察知して対応するための仕組みが法案に組み込まれています。
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具体的には、特別規則の対象にされていない化学物質のうち、一定のリスクがあるもの等について、事業者にリスクアセスメント(危険性または有害性等の調査)を義務付けたのです。
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安衛法では、すでにアスベストなどの特に危険性・有害性が高い8物質は製造が禁止され、また、それに準じて健康障害が多発しているPCBなどの116物質は個別に規制されています。<br>
さらに、116物質を含む640物質については、安全データシート(SDS)の交付が義務付けられています。
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平成26年2月の労働政策審議会の答申を読むと、リスクアセスメントの対象物質には、640物質のうち、これまで個別に規制されてこなかった物質を想定しているようです。<br>
胆管がんの原因物質とされる1,2-ジクロロプロパンもここに含まれます。
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法案成立後に整備されるリスクアセスメントの実施事項の中身にもよりますが、規制対象物質が大きく増えるので、事業者は慎重に改正動向をウォッチして的確に対応することが求められるのは間違いありません。
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法案のうちリスクアセスメントの条項の施行は、改正法の施行から2年以内となります。
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▶︎ 「第186回国会(常会)提出法律案/労働安全衛生法の一部を改正する法律案」(厚生労働省)<br>
⇒<a href="http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/186.html" target="_blank" class="underline">http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/186.html </a>
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