環境コンサルタント
安達宏之 氏
平成29年6月9日、改正廃棄物処理法施行規則などが公布されました。
10月1日からスタートする新・水銀規制の詳細を定めたものです。
当初、この改正規則は3月頃までには公布される予定でした。対策の準備ができずにヤキモキする企業も少なかったかと思いますが、ようやく規制内容が確定したことになります。
規則の改正項目は、次の5点です。
①特別管理一般廃棄物又は特別管理産業廃棄物の処分基準の追加
②廃水銀等の硫化施設の産業廃棄物処理施設への追加
③水銀使用製品産業廃棄物及び水銀含有ばいじん等に係る処理基準の追加
④従来の水銀を含む特別管理産業廃棄物に係る処理基準の追加
⑤最終処分場の維持管理基準及び廃止基準の追加
このうち、多くの企業に関係する規制は③であり、特に「水銀使用製品産業廃棄物」の新規制に十分注意する必要があります。
水銀が含有されている産業廃棄物でも、従来は単なる産業廃棄物として処理の委託ができていたものが、今回の改正によって、「水銀使用製品産業廃棄物」として特別な規制を受けることになったのです。
廃棄物処理法上、最も規制の厳しい対象として「特別管理産業廃棄物」のカテゴリーがありますが、この水銀使用製品産業廃棄物は、そこまでの厳しい規制ではありません。しかし、後述する通り、改正内容を把握しないまま運用すると法に逸脱することが容易に想像されるので、注意すべきものです。
では、水銀使用製品産業廃棄物とは、何を指すのでしょうか。
具体的には、次の3つが産業廃棄物となったものとなります(詳細は、改正後の規則7条の2の4参照)。
上記のうち、①で示している37種類とは、次のものを指します(詳細は、改正後の規則別表4参照)。
蛍光灯(No.4「蛍光ランプ」)など、事業所の規模や業種に関わらず、多くの事業所において見られる製品が掲げられています。すなわち、規制対象となる事業所数は膨大にのぼるということなのです。
これら水銀含有産業廃棄物の排出事業者となった場合、10月1日より、主に保管基準と委託基準、マニフェストのルールが変わることになります。
保管基準の改正では、保管場の掲示板に水銀使用製品産業廃棄物が含まれる旨も表示しなければなりません。
また、水銀使用製品産業廃棄物がその他の物と混合するおそれのないように、仕切りを設ける等必要な措置を講ずることも求められます。
委託基準の改正では、まず、水銀使用製品産業廃棄物の処理を委託する処理業者が、その処理を業として行うことができる者として都道府県知事の許可を受けた者に限定されます。
また、契約書に、水銀使用製品産業廃棄物が含まれる旨を記載しなければなりません。
なお、改正規則の附則により、10月1日の施行のときに既に締結されている契約については、契約の更新までの間は、なお従前の例によることとされたので、それまでの追記は不要となりました。
マニフェスト規定の改正では、交付するマニフェストに、水銀使用製品産業廃棄物が含まれる旨を記載しなければなりません。これは、電子マニフェストの場合も同様です。
このように、水銀使用製品産業廃棄物の処理委託を行う際には、従来と異なる対応手順となるので、施行前に社内の各部門にしっかりと改正内容の情報伝達を行うことが求められます。
(2017年06月)
▶︎ ◎廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の公布(水銀関係)について(環境省)
⇒http://www.env.go.jp/press/104151.html