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建設リサイクル法、土木工事に抜けあり!?

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環境コンサルタント
安達宏之 氏

 ある工場を訪問すると、工事車両が出入りしていました。
 工場内の道路の工事をしているようです。話を聞いてみると、路面が劣化してきたためにアスファルトを取り除き、新たな道路をつくるそうです。

 「工事の規模からすると、建設リサイクル法に基づく届出が必要かもしれませんが、どうされていますか?」
 「え? 建設リサイクル法は、建物の解体工事に適用される法律ですよね? 路面工事にも適用されるのですか?」
 「土木工事にも適用されますよ。500万円以上の土木工事の場合、発注者が届出をしなければなりません。」
 「あ、でも、この工事は確か400万円台のものなので、500万円にはならないはずです。」
 「そうなんですね。あ、でも、その金額は税込価格ですかね?」
 「え? うーん、社内では税抜き価格で予算を組んでいるので、おそらく税抜き価格ですね。500万円とは、税込価格なのでしょうか...?」

 後述するように、「500万円」とは、税込価格です。
 この事例では、その後調べたところ、税込価格でも500万円に達していなかったので、届出義務違反とはなりませんでしたが、時々、本法の規制を知らずに、届出することなく、500万円以上の土木工事を発注している企業がありますので、注意が必要です。

 建設リサイクル法の規制の概要は、次の図表の通りです。

建設リサイクル法の規制概要

■規制対象となる工事
特定建設資材(①コンクリート 、②コンクリートと鉄から成る建設資材、③木材、④アスファルト・コンクリート)が使われている構造物で、かつ次の工事建築物、工作物の解体・改造・補修作業
工事の種類 規模の基準
建築物の解体工事 床面積の合計 80㎡
建築物の新築・増築工事 500㎡
建築物の修繕・模様替え(リフォーム等 請負代金の額 1億円(税込価格)
その他の工作物に関する工事(土木工事等 500万円(税込価格)
■規制事項
  • 発注者又は自主施工者は、工事7日前までに対象建設工事の届出
  • 元請業者は、発注者へ対象建設工事の届出事項について書面で報告
  • 工事受注者は、分別解体等で生じた特定建設資材廃棄物を再資源化
  • 元請業者は、再資源化等が完了したときは、発注者に書面で報告、実施状況の記録を作成・保存

 建設リサイクル法では、「特定建設資材」を用いた一定の工事を行う場合、その発注者等に対して届出を義務付けるとともに、その受注者等に対して分別解体や再資源化などを義務付けています。

 特定建設資材とは、コンクリート(プレキャスト板等を含む。)、アスファルト・コンクリート、木材を指します。

 また、一定の工事とは、①建築物の解体工事では床面積80㎡以上、②建築物の新築又は増築の工事では床面積500㎡以上、③建築物の修繕・模様替え等の工事では請負代金が1億円以上、④建築物以外の工作物の解体工事又は新築工事等では請負代金が500万円以上とされています。
 冒頭の事例のように、ここで掲げている金額は、税抜き価格ではなく、税込価格です。

 この対象工事の元請業者は、あらかじめ分別解体等の計画等について、発注者に対して書面を交付して説明しなければなりません。

 また、発注者又は自主施工者は、工事に着手する7日前までに、建築物等の構造、工事着手時期、分別解体等の計画等について、都道府県知事等に届け出なければなりません。

 工事の際、工事受注者は、本法に基づき、分別解体等で生じた特定建設資材廃棄物を再資源化等をしなければなりません。下請業者に届け出事項を伝え、工事現場ごとに、公衆の見やすい場所に所定の標識を掲示しなければなりません。

 また、元請業者は、再資源化等が完了したときは、その旨を発注者に書面で報告しなければなりません。そして、再資源化等の実施状況に関する記録を作成し、保存しなければなりません。

 工事というと、ついつい元請業者に任せっきりの発注者が少なくありません。
 しかし、本法には、元請業者だけでなく、発注者にも義務があることを忘れてはなりません。
 発注サイドに立つ事業者は、自社内の手順の中に、本法の届出義務もしっかり位置付けるべきでしょう。

参考文献
安達宏之『企業事例に学ぶ 環境法マネジメントの方法 ―25のヒント―』
※本書は、本連載の記事を改訂・追加し、再構成したものです。
https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/104656.html

(2024年08月)

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