大栄環境グループ

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法令遵守状況のチェックを形骸化させない

Author

環境コンサルタント
安達宏之 氏

 食品製造業の工場を訪問しました。
 この企業ではISO14001を認証取得していましたが、産業廃棄物処理の際の契約書に添付する許可証の有効期限切れ、水質汚濁防止法の特定施設の変更の未届出など、環境法の遵守に関する課題がいくつも出てきました。
 順守評価結果をまとめた表を見ると、廃棄物処理法の契約書や許可証の欄や、水質汚濁防止法の特定施設の設置・変更届出の欄には、いずれも「○」が付いています。他の欄もすべて「○」が付いていました。また、内部監査報告書を見ると、「法令違反はない。」という記述がありましたので、その実態について聞いてみました。

 「順守評価は誰がどのように実施しているのですか?」
 「法令遵守をする担当者自身が順守評価をしています。」
 「それは一般的な方法ですね。ところで、そのご担当者には法令教育は実施していますか?」
 「いえ、各自で勉強するように伝えているだけですね。」
 「そうですか...。ところで、内部監査ではどのように法令遵守のチェックをしているのですか?」
 「うーん、実際は順守評価をしているかどうかをチェックするにとどまっています。監査員は正直なところあまり法令知識もないんですよね...。」

 上記のような法令遵守状況のチェックの形骸化は、程度の差はあれ、決して珍しいことではありません。せっかく環境マネジメントシステム(EMS)という仕組みがあるのに、何とももったいない話です。

 ISO14001をヒントに、実効性のある法令遵守状況のチェックの仕組みをまとめると、次の図表のようになると思われます。

法令遵守状況のチェックの仕組み(例)

項目 実施事項 実施者 教育訓練
順守評価 遵守状況をチェックする(全項目 法令遵守の担当者 実施
  • ・日頃、法令遵守をしている担当者が、年1~2回など、定期的に遵守状況を確認し、記録する。
  • ・セルフチェックとなるので、チェックに抜け漏れが出るリスクはある。それを防ぐために、定期的な教育による力量向上の仕組みが必要である。
  • ・参考:ISO14001箇条7.2(力量)、9.1.2(順守評価)
内部監査 遵守状況をチェックする(全項目又はサンプリング 内部監査員 実施
  • ・社内第三者として、年1回など、定期的に遵守状況を客観的かつ横断的にチェックし、記録する。
  • ・法規制項目すべてをチェックしてもよいが、負荷が大きいと思われるので、サンプリングでのチェックでもよい。毎回、テーマを変えてチェックをしてもよいだろう(初年度:廃棄物処理法、次年度:消防法の危険物など)。
  • 監査員教育プログラムの中に、法令教育のプログラムも組み入れる必要がある。
  • ・参考:ISO14001箇条7.2(力量)、9.2(内部監査)

 ISO14001規格は、企業が継続的な法令遵守をする上で、対策のヒントが詰まっています。ISOを認証取得していない企業にも学ぶべき点が多いと思われます。

 法令遵守状況のチェックについて、規格では、「順守評価」と「内部監査」の2つの仕組みがあります。

 「順守評価」では、定期的に法令遵守状況を評価するプロセスを運用することを求めています。その際、実施者に必要な力量確保も求めています。順守評価の結果は記録しなければなりません(9.1.2)。
 「内部監査」では、規格の要求事項や自ら決めたルールへの適合性と有効性を監査することを求めています(9.2)。また、規格の別の箇所で、法令遵守に関わる業務を担う人に対して必要な力量を付与するために、教育訓練等を行うことを求めています(7.2)。

 企業実務にこれら要求事項を落としていくと、まず、順守評価のプロセスでは、日頃、法令遵守をしている担当者が、年1~2回など、定期的に遵守状況を確認し、記録する手順となるでしょう。チェック項目は自ら対応している遵守事項すべての項目となります。

 ただし、これはセルフチェックとなるので、チェックに抜け漏れが出るリスクがあります。それを防ぐために、定期的な教育による力量向上の仕組みが必要となります。

 次に内部監査のプロセスでは、社内第三者の立場である内部監査員が、年1回など、定期的に遵守状況を客観的かつ横断的にチェックし、記録する手順となるでしょう。

 内部監査において法規制項目すべてをチェックしてもよいでしょうが、他の監査項目もあるので作業負荷が大きいと思われます。サンプリングでのチェックも一つの方法でしょう。
 「今年は廃棄物処理法のチェック、来年は消防法の危険物のチェック」など、毎回、テーマを変えて監査をしている企業もあります。

 また、内部監査員になるときや、内部監査を実施する前に監査員教育を行います。そのプログラムの中に、法令教育のプログラムも組み入れる必要があります。

 ISO14001は、1996年に制定された当初は「順守評価」の要求事項がありませんでした。2004年の改訂の際に追加された要求事項です。
 論理的には、すでに監視・測定のプロセスや内部監査のプロセスがあったので、あえて法令遵守に関連したチェックのプロセスは無くても成立するはずです。それにも関わらず、「順守評価」のプロセスが追加されたということは、規格は、法令遵守のチェックのために、内部監査だけでなく、順守評価を加えたということであり、いわばダブルチェックをして法令遵守機能を強化したということになります(監視測定プロセスも加えれば、トリプルチェック)。
 この規格がいかに法令遵守(規格の用語では「順守義務」)を重視している証左のひとつです。

 一方、企業の対応状況を見ていると、こうした規格の考え方から離れ、教育プログラムが無く、法令知識が欠けた担当者による順守評価と内部監査が行われていることがあるのは、やはり改善すべき事柄と言わざるをえません。

 順守評価・内部監査は、法令遵守の最後の砦です。これを崩さず、前向きに仕組みの再構築を検討してみるとよいでしょう。

参考文献
安達宏之『企業事例に学ぶ 環境法マネジメントの方法 ―25のヒント―』
https://www.daiichihoki.co.jp/store/products/detail/104656.html

(2026年04月)

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