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新たな取組みを示す改訂の全体像とは?

Author

洛思社 代表取締役 / 環境経営部門チーフディレクター
安達宏之 氏

2026年4月15日、環境マネジメントシステム(EMS)の国際規格であるISO14001が改訂されました。前回が2015年改訂でしたので、実に11年ぶりの改訂となります。

全国で約2万の企業などがISO14001の認証を取得し、環境の取組みを進めています。
また、認証取得をしていなくても、EMSを運用する企業もあり、今回の改訂の影響は広範囲に及ぶことになります。

そこで、本連載では、この2026年改訂のポイントをわかりやすく解説していきます。
今回は、改訂の全体像と認証取得企業の対応手順について取り上げます。

2026年改訂のポイントについて、私なりに整理すると次の図表のようになります。

ISO14001:2026年改訂のポイント

改訂事項等 企業等の対応のポイント
1
  • ・新しい要求事項は無い
  • ・従来のEMS活動をしっかりやっていれば、不適合は検出されない
  • ・ただし、「何もしなくてもよい」と判断すると、活動は形骸化する
2
  • ・全体構成がすこし変わる
  • ・自社のマニュアルを新構成に沿って改訂する
3
  • ・活動テーマが具体的となり、その対象が広がる(ライフサイクル、環境保護の範囲の拡大)
  • ・自社外でも自社に関係する活動テーマを探す
  • ・自社内の活動テーマ設定の適切性を再吟味する
4
  • ・変更の計画策定が追加される(新箇条)
  • ・抜け漏れの多い変化点の管理プロセスを見直す

まず強調しておきたいことは、今回の改訂により新しい要求事項が追加されたことはないということです。
認証取得企業の立場から言えば、「従来のISOの活動をしっかりやっていれば、2026年版の新規格に基づく審査を受けても、新規格に基づく不適合が出ることはない。」ということになります。新規格に過度に構える必要はありません。

ただし、だからと言って、「何もしなくてもよい」と判断するのは危険です。
例えば、規格の全体構成や用語などが改訂されています。2015年版を経験している関係者は、従来のマニュアルなどのままで活動を継続した場合でも対応できるでしょう。しかし、数年後、新規に配属される関係者が混乱することは必至です。
EMSを運用する際に大切なことは、「次世代になっても運用できるか」という視点を持つことです。
要求事項が増えないとしても、やはり何らかの対応は必要となります。

また、2026年版により、規格の全体構成がすこしだけ変わります。
例えば、「6.1.1」という箇条にて「リスク及び機会」を定めていましたが、「リスク及び機会」は「6.1.4」という新しい箇条に移動されました。
ほとんどの企業では、自社の環境マニュアルの構成を規格の構成と同じにしています。
そこで、わかりやすさのために、自社のマニュアルを新構成に沿って改訂する必要性が出てくることでしょう。

さらに、要求事項が増えないとしても、2026年版では、組織が取組むべき活動テーマが具体的となり、その対象が広がりました。
例えば、自社の課題を整理する要求事項となる「4.1」において、環境上の課題として、気候変動、汚染、天然資源、生物多様性などが提示されました。自社に関係する活動テーマを今一度吟味するとよいでしょう。

新しい箇条として「変更の計画策定」が追加されたことも重要です。
従来からISOでは、「変更のマネジメント」の重要性が強調され、規格の各所に関連する要求事項がありました。この考え方を新箇条の中で表現しているとも言えます。
EMSの実務において、変化点の管理プロセスはいつも議論になります。設備が変わったり、担当者が変わったりしても、環境側面の見直しや教育が実施されず、形骸化した活動につながりやすくなります。この対応を改めて求めたとも捉えることができます。

このように、一定の範囲の中ではありますが、企業には2026年改訂により対応すべき事項が少なくありません。それは、活動の有効性を高めるための取組みにつながります。

(2026年5月)

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