ISO14001が2026年版となり、ISO認証取得企業は、今後、2015年版から2026年版に移行することになります。
数カ月後にはJIS規格が改正されることになります。JISは「日本産業規格」のことであり、日本国としての規格となります。
ISO14001を訳した国の規格が「JIS Q 14001」なので、ISO認証取得企業は、実務上は、JIS規格が改正されてから本格的な改訂の検討を始めるとよいでしょう。
また、移行期間は2026年の発行から約3年となるので、2029年4月が移行の期限となります。
認証取得企業は、この時間軸の中で、自社のEMS(環境マネジメントシステム)の変更の必要性を検討し、必要があれば変更し、移行審査に備えることになります。
なお、移行審査は、通常行われる審査の中で行われるのが一般的です。
前回の記事において、「今回の改訂により新しい要求事項が追加されたことはないが、全体構成がすこし変わった」という趣旨のことを書きました。
では、全体構成はどのように変わったのか。その全体像を示すと、次の図表の通りです(なお、JISはまだ改正されていないので、表現が若干変わることがあります)。
ISO14001の2015年版と2026年版の構成の変更
| 2015年版 | 2026年版 | ポイント |
| 4 組織の状況 | ||
|---|---|---|
| 4.1 組織及びその状況の理解 | ||
| 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | ||
| 4.3 環境マネジメントシステムの適用範囲の決定 | ||
| 4.4 環境マネジメントシステム | ||
| 5 リーダーシップ | ||
| 5.1 リーダーシップ及びコミットメント | ||
| 5.2 環境方針 | ||
| 5.3 組織の役割、責任及び権限 | ||
| 6 計画 | ||
| 6.1リスク及び機会への取組み | 2015年版では6.1.1の中に「リスク及び機会」があったが、これを「6.1.4リスク及び機会への取組」として独立させた。 | |
| 6.1.1 一般 | ||
| 6.1.2 環境側面 | ||
| 6.1.3 順守義務 | ||
| ― | 6.1.4 リスク及び機会への取組 | |
| 6.1.4 取組みの計画策定 | 6.1.5 取組みの計画策定 | |
| 6.2 環境目標及びそれを達成するための計画策定 | ||
| 6.2.1 環境目標 | ||
| 6.2.2 環境目標を達成するための取組み | ||
| ― | 6.3 変更の計画策定 | 2026年版で新たな箇条として「6.3 変更の計画策定」が追加された。 |
| 7 支援 | ||
| 7.1 資源 | ||
| 7.2 力量 | ||
| 7.3 認識 | ||
| 7.4 コミュニケーション | ||
| 7.4.1 一般 | ||
| 7.4.2 内部コミュニケーション | ||
| 7.4.3 外部コミュニケーション | ||
| 7.5 文書化した情報 | ||
| 7.5.1 一般 | ||
| 7.5.2 作成及び更新 | ||
| 7.5.3 文書化した情報の管理 | ||
| 8 運用 | ||
| 8.1 運用の計画及び管理 | ||
| 8.2 緊急事態への準備及び対応 | ||
| 9 パフォーマンス評価 | ||
| 9.1 監視,測定,分析及び評価 | ||
| 9.1.1 一般 | ||
| 9.1.2 順守評価 | ||
| 9.2 内部監査 | ||
| 9.2.1 一般 | ||
| 9.2.2 内部監査プログラム | ||
| 9.3 マネジメントレビュー | 要求事項に変化はないが、タイトルが追加された。 | |
| ― | 9.3.1 一般 | |
| ― | 9.3.2 マネジメントレビューへのインプット | |
| ― | 9.3.3 マネジメントレビューの結果 | |
| 10 改善 | ||
| 10.1 一般 | 10.1 継続的改善 | 2015年版の10.1と10.3が10.1に集約された。 |
| 10.2 不適合及び是正処置 | ||
| 10.3 継続的改善 | ― | |
このように、規格の構成の変更は小規模なものにとどまっています。その意味では、2015年版に改正されたときのように、大幅なマニュアル等の変更を行う必要はありません。
とはいえ、多くの企業は、ISO14001の構成に沿ったマニュアルをまとめています。ISOで変更された箇所は、マニュアルにおいても同様に変更すべきでしょう。
また、上記の構成で変更がない箇所についても、表現の変更や、追記された箇所もあります。
例えば、「4.1
組織及び状況の理解」では、組織は外部及び内部の課題を整理することが求められています。その課題には「環境状態」を含めることも求められていますが、その「環境状態」の事例として、生物多様性などが掲げられています。
マニュアルの文章がISOの表現と重なっていることが多い中で、こうした変更箇所もチェックし、追記等をすべきでしょう。
JIS規格の改正後、現在のEMSの運用に満足しているのであれば、2026年版を見ながらマニュアル等を小規模に改訂していけば十分だと思われます。
しかし、現在のEMSの運用に本当に課題がないものなのかどうか。現場を歩いてきた筆者としては、決してそうとは思えない企業の取組みが少なくないと思えます。
今回の改訂を有効なEMSにするチャンスの機会と捉えて、前向きに検討してみるとよいでしょう。
(2026年6月)


