前回に引き続き、「令和6年6月28日付通知」をご紹介します。
今回は、前回と同様に、各論「第1 デジタル化のために活用し得る技術」を冒頭に再掲し、その後で各論「第3 定期検査・点検規制について」を見ていきます。
令和6年6月28日付通知
デジタル化検討調査により、廃棄物処理法等に基づく各種手続のデジタル化に活用し得る技術の調査を行った結果、現時点で、以下の表に示す8類型に分類し得るとの調査結果が得られた。
活用できるデジタル技術 | 概要 |
①オンライン会議システム等による現況等の確認 | オンライン会議システムなどで送られてくる現地の画像・映像をもとに、手元の図面や資料と照合する |
②センサーによるオンラインモニタリング | 騒音計や臭気センサーなどのセンサーからの出力を伝送して遠隔で確認する |
③点群データによる測量 | レーザースキャナーで取得した点群データ(測量結果)をもとに埋立の残余容量を求める |
④点群データによる変位の解析 | レーザースキャナーで取得した点群データを解析して基礎の沈下や変形を検知する |
⑤AIによる画像解析 | 検査対象物を撮影した画像をAIで分析して亀裂などを検出する |
⑥赤外線カメラ画像の解析 | 赤外線カメラで撮影した画像で擁壁等の劣化状況を検出する |
⑦機器の遠隔監視 | ポンプなどの設備機器を対象とした遠隔監視システムで稼働状況を監視・確認する |
⑧小型無人航空機(ドローン)による現況等の確認 | ドローンに搭載したカメラ等から伝送される画像・映像をもとに、手元の図面や資料と照合する |
以上が、廃棄物処理法関連実務で活用可能なデジタル技術の8類型です。
デジタル化検討調査により、対象法令において規定される定期検査・点検規制について、デジタル技術を活用することが可能か否かを検証した。その結果、対象法令において規定される各種定期検査・点検規制において、以下の表のとおり、それぞれ対応するデジタル技術を活用し得ることが確認された。このため、当該検査・規制の実施の方法について、実施者が最終的な判断を行うこととした上で、後述するデジタル技術を活用することが効果的かつ適切である場合には、当該デジタル技術を活用することを妨げるものではない。
なお、実施者は、検査・点検等の目的、検査・点検対象の性質等を考慮した上で実施方法を判断することが求められる。実地確認等については、電磁的記録による許可内容や帳簿等の情報の確認、オンライン会議システム等を用いて廃棄物処理業者への管理体制の聴取を行うことなど、確認の一部に当該デジタル技術を活用されたい。
対象法令において規定される定期検査・点検規制及び各規制に活用できるデジタル技術は以下のとおりである(「見直し対象(定期検査・点検規制)」に関係する通知等についても、当該デジタル技術を活用することを妨げるものではない。)。
見直し対象 (定期検査・点検規制) |
法令名称 | 条項 | 第1に掲げる表のうち、活用し得る デジタル技術 |
実地確認 | 廃棄物処理法施行規則 | 第1条の8 | ①、②、④、⑤、⑥、⑦、⑧ |
機能検査 | 廃棄物処理法施行規則 | 第4条の5第1項・第 14 号、第2項第12 号、第 12 条の6第4号 | ①、②、④、⑤、⑥、⑦、⑧ |
廃棄物処理施設の定期検査 | 廃棄物処理法 | 第8条の2の2、第15 条の2の2 | ①、②、④、⑤、⑥、⑦、⑧ |
定期点検 | 廃棄物処理法施行規則 基準省令 | 廃棄物処理法施行規則第 12 条の6第4号、第 12 条の7第 4項、第5項第3 号、第 15 項第1号、第 16 項第1号、第 17 項第1号、基準省令第1条第2項第7号、第9号、第 14 号ロ、第 14 の2号、第1条の2第2項第3号、第5号、第2条第2項第1号ハ、ホ | ①、②、④、⑤、⑥、⑦、⑧ |
残余埋立容量の測定 | 基準省令 | 第1条第2項第 19号 | ③ |
温度、圧力等の測定 | 廃棄物処理法施行規則 | 第1条の7の2第1号ハ、第4条第1項 第8号ロ(3)、第4条の5第1項第3 号ロ(2) | ② |
精密機能検査 | 廃棄物処理法施行規則 | 第5条 | ①、②、④、⑤、⑥、⑦、⑧ |
各論「第3 定期検査・点検規制について」の中身に入る前に、前回の「第2 目視規制について」に登場した「実地確認」が、「第3 定期検査・点検規制について」の冒頭に再登場しています。「第3」における「実地確認」は、「活用し得るデジタル技術」として、「第2」の際の4項目から大幅に増えた7項目が挙げられています。
同じ「実地確認」なのに、「第2 目視規制」と「第3 定期検査・点検規制」で「活用し得るデジタル技術」の数が異なる理由は、そもそもの「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」で、「目視規制」と「定期検査・点検規制」の目指す最終目標(「PHASE3」)が異なるためです。
前回の「目視規制」の最終目標は「判断の精緻化、自動化・無人化」ですが、今回の「定期検査・点検規制」の最終目標は「定期の検査・調査・測定の撤廃」になりますので、「目視規制」に関する提言よりもさらに踏み込み、より広範なデジタル技術の活用を目指すという政府の姿勢がうかがえます。
「実地確認」
市町村が一般廃棄物の処分・再生を委託する際の委託基準の一つで、市町村は委託先を1年に1回以上実地に確認しなければならないというもの。
「第1デジタル化のために活用し得る技術」に掲載されている、「①オンライン会議システム等による現況等の確認」「②センサーによるオンラインモニタリング」「④点群データによる変位の解析」「⑤AIによる画像解析」「⑥赤外線カメラ画像の解析」「⑦機器の遠隔監視」「⑧小型無人航空機(ドローン)による現況等の確認」の7手法の活用が可能とされています。
前号で述べたとおり、地形データや上空からの撮影画像を元にした、「最終処分場」等の地形上の変化を読み解く技術の活用が想定されていますが、これらのデジタル技術をすべて活用したとしても、それだけで「定期検査の撤廃」に踏み切ることは早計に思えます。市町村側が見たいポイントを細大漏らさずデジタル技術でカバーできるかという、技術的な制約があるからです。
「機能検査」
一般廃棄物処理施設及び産業廃棄物処理施設の正常な機能を維持するため、定期的に施設の点検及び機能検査を行わなければならないという維持管理基準の一つ。
「①オンライン会議システム等による現況等の確認」「②センサーによるオンラインモニタリング」「④点群データによる変位の解析」「⑤AIによる画像解析」「⑥赤外線カメラ画像の解析」「⑦機器の遠隔監視」「⑧小型無人航空機(ドローン)による現況等の確認」の7手法の活用が可能とされています。
「廃棄物処理施設の定期検査」
廃棄物処理施設に対し行政庁が定期的に行う検査に関する提言。
「①オンライン会議システム等による現況等の確認」「②センサーによるオンラインモニタリング」「④点群データによる変位の解析」「⑤AIによる画像解析」「⑥赤外線カメラ画像の解析」「⑦機器の遠隔監視」「⑧小型無人航空機(ドローン)による現況等の確認」の7手法の活用が可能とされています。
行政機関及び廃棄物処理施設設置者の双方にとって、大幅な労力削減が見込める提言ではあります。
「定期点検」
産業廃棄物処理施設のうち、廃油等の流出防止堤その他の設備を定期的に点検しなければならないという維持管理基準の一つ。
「①オンライン会議システム等による現況等の確認」「②センサーによるオンラインモニタリング」「④点群データによる変位の解析」「⑤AIによる画像解析」「⑥赤外線カメラ画像の解析」「⑦機器の遠隔監視」「⑧小型無人航空機(ドローン)による現況等の確認」の7手法の活用が可能とされています。
「残余埋立容量の測定」
「残余の埋立容量について一年に一回以上測定し、かつ、記録すること」という一般廃棄物最終処分場の技術上の基準の一つ。
「レーザースキャナーで取得した点群データ(測量結果)をもとに埋立の残余容量を求める」という「③点群データによる測量」の活用が提言されています。
これは比較的早期に実現可能な手段ではないかと思われます。
「温度、圧力等の測定」
「一般廃棄物焼却施設等の炉内又は炉の出口における温度を定期的に測定・記録すること」という技術上の基準の一つ。
「騒音計や臭気センサーなどのセンサーからの出力を伝送して遠隔で確認する」という「②センサーによるオンラインモニタリング」の活用が提言されています。
これも比較的早期に実現可能な手段と思われます。
「精密機能検査」
「ごみ処理施設及びし尿処理施設の機能を保全するため、定期的に、その機能状況、耐用の度合等について精密な検査を行うようにしなければならない」という両施設設置者の義務。
「①オンライン会議システム等による現況等の確認」「②センサーによるオンラインモニタリング」「④点群データによる変位の解析」「⑤AIによる画像解析」「⑥赤外線カメラ画像の解析」「⑦機器の遠隔監視」「⑧小型無人航空機(ドローン)による現況等の確認」の7手法の活用が可能とされています。
(つづく)
(2025年01月)