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「処理状況確認」について(第13回)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 これまで12回にわたり、廃棄物処理法第12条第7項の「処理状況確認」の定義から、最近発出されたデジタル技術の活用方法に関する通知の詳細を見てきました。今回でこのテーマは最後となりますので、これまでのおさらいをしておきます。

 まずは、廃棄物処理法上の「処理状況確認」の位置づけについては、下記のとおりとなります(第1回で詳述)。

  • ・「処理状況確認」とは、産業廃棄物処理委託をした際に排出事業者が行うべき「産業廃棄物処理の状況に関する確認」を意味する
  • ・努力義務であるため、それを怠ったとしても、すぐさま刑事罰の対象になるわけではない
  • ・ただし、怠った場合は、廃棄物処理法第19条の6に基づく措置命令の対象となる可能性がある
  • ・廃棄物処理法第19条の6に基づく措置命令を受けたにもかかわらず、それを履行しなかった場合には、措置命令違反として刑事罰の対象になる
  • ・排出事業者が実行しなければならない、産業廃棄物処理委託に伴う実務の一つである

 次に、「処理状況確認」が廃棄物処理法に登場する契機となった2010年の「廃棄物処理制度専門委員会報告書」では、「定期的」あるいは「実地に」確認することが必要と指摘されていたことを見てきました(第4回から第6回で詳述)。

「廃棄物処理制度専門委員会報告書」
 「排出事業者責任の強化・徹底」
 「(イ)適正な委託処理の確保」
 排出事業者は最終処分が終了するまでの一連の処理行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講じなければならないという義務を有しているが、その措置の実効性を高める観点から、排出事業者及び中間処理業者は、委託した処理が委託契約書に沿って適切に実施されていることを定期的に確認するべきである。その方法としては、実地に確認することや産業廃棄物処理業者による情報提供等により確認することなどが考えられ、排出事業者が直接委託していない処理(例えば、中間処理後の最終処分)に関しては原則として直接委託した者が確認し排出事業者はその結果を確認すればよいとすることが考えられる。
第7回の連載では、産業廃棄物管理の実務シーンごとに、望ましい処理状況確認の頻度について考察しました。

 第8回と第9回は、令和5年3月31日付通知「デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について」の詳細を見ていきました。
 同通知では

 法第3条第1項及び第12条第7項において、排出事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならず、その産業廃棄物の処理を他人に委託する場合には、処理の状況に関する確認を行い、最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならないこととされている。その処理の状況に関する確認にあたっては、処理を委託した産業廃棄物の保管状況や実際の処理工程等について処理業者とコミュニケーションをとりながら確認を行うことや、公開されている情報について不明な点や疑問点があった場合には処理業者に回答を求めることなど、法に基づき適正な処理がなされているかを実質的に確認することが重要である。
 当該確認の方法については、廃棄物の処理が適正に行われていることを実質的に確認することができると認められるのであれば、実地に赴いて確認することに限られず、デジタル技術を活用して確認することも可能である。デジタル技術を活用した確認の方法としては、例えば、電磁的記録による許可内容や帳簿等の情報の確認、オンライン会議システム等を用いた処理施設の稼働状況や周辺環境の確認、情報通信機器を使用して産業廃棄物処理業者への管理体制の聴取を行うことなどが考えられる。
 また、排出事業者責任の重要性に対する認識や排出事業者と処理業者との直接の関係性が希薄になることがないと認められる場合であって、上記のとおり廃棄物の適正な処理について実質的な確認が可能である場合は、同一の産業廃棄物処理業者に処理を委託している複数の排出事業者が共同してデジタル技術の活用により廃棄物の処理の状況を確認することは妨げられるものではない。

と、「廃棄物の処理が適正に行われていることを実質的に確認することができると認められるのであれば、実地に赴いて確認することに限られず、デジタル技術を活用して確認することも可能である」という解釈が示されています。この解釈の是非については、本稿の最後で言及いたします。

 第10回から第12回は、令和6年6月28日付「デジタル原則を踏まえた廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の適用に係る解釈の明確化等について」の詳細を見ました。
 同通知では、市区町村による委託先事業者への実地確認その他についても、デジタル技術を活用できる局面があるという解釈が示されていました。
 しかしながら、デジタル技術は万能な道具ではありませんので、同通知では「デジタル確認でも可」とされた実務であっても、そのとおりに実施することが難しいケースが多いと思われます。その一方で、「廃棄物処理施設の定期検査」等のデジタル技術を活用することで、行政と事業者双方の負担軽減につながる可能性も見えてきました。

処理状況確認を今すぐデジタル技術による遠隔確認へと代替できるか?
 令和5年3月31日付通知では、デジタル技術による確認方法として、
  • 1. 電磁的記録による許可内容や帳簿等の情報の確認
  • 2. オンライン会議システム等を用いた処理施設の稼働状況や周辺環境の確認
  • 3. 情報通信機器を使用して産業廃棄物処理業者への管理体制の聴取を行うこと
という3つの手法が例示されていました。
 このうち、1の許可内容や帳簿の確認については、既にHPやインターネット上での情報のやり取りで、一般的に行われていることです。言うまでもありませんが、HPで許可内容を確認しただけでは処理状況確認をしたことになりません。あくまでも、「処理状況確認をする際の付随的な情報収集の一環として、インターネットで情報確認をしただけ」の話となります。
 そのように考えると、上記の2と3のいずれも、1と同様に、それ単独では「処理状況確認をする際の付随的な情報収集の一環として、インターネット等で情報確認をしただけ」に過ぎません。
 処理状況確認とは、「法に基づき適正な処理がなされているかを実質的に確認する」ことにあるわけですから、HP等の公開情報を参照することは情報収集の一環であり、「実質的に確認する」ためには、処理業者の事業場という「現場」に行かなければ得られない情報が多々あります。
 オンライン会議システムで処理業者とコミュニケーションを図ることは大いに結構ですが、それらのシステムは、処理業者側が見せたい情報しか見せなくできるという構造的な弱点があります。「実質的に確認」するためには、相手が見せたくない情報を積極的に取りに行くことが必要な場合もありますので、信頼性の不安がある委託先の場合は、早急に現場へ行き、処理状況確認を行うことをお薦めします。

(2025年02月)

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