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「廃棄物処理法改正の動き」(第4回)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今回は、2025年4月25日に開催された「第4回 廃棄物処理制度小員会」での審議状況をご紹介します。
 第4回小委員会の議題は「資源循環の推進に向けた制度的取組」と「PCB 廃棄物の処理に関する制度的措置の検討」の2つでした。第4回は、第2回に意見ヒアリングしたテーマについて深掘りを行う場であったため、委員から具体的な問題点の指摘が多数あり、廃棄物処理法改正の方向性がより明確になりました。
 審議の順序としては、まず環境省が資料に沿って現況やそれへの制度的対応措置を論点として提示し、委員が意見を出すという流れで進められましたので、今回は「スクラップヤード規制」に関する論点を紹介していきます。

スクラップヤード規制
資料1-1 「ヤード環境対策検討会の取りまとめの報告について」
資料1-2 「ヤード環境対策の制度的措置の検討について」
背景
  • ・平成29(2017)年の廃棄物処理法改正で「有害使用済機器保管等届出制度」が創設されたが、対象外の金属スクラップ等の不適正保管・処理による環境問題(騒音・悪臭・火災・汚染)が発生している。
  • ・令和6(2024)年の「第五次循環型社会形成推進基本計画」でも、雑品スクラップ管理・不適正輸出防止・環境対策強化の必要性が明記された。
現行制度の課題
  • ・「有害使用済機器」と「廃棄物」の判断基準が不明確
  • ・対象品目が限定的で流通経路把握困難
  • ・有価物でも生活環境への支障があるもの(廃鉛蓄電池・廃油等)が規制対象外
  • ・多くのヤードで雑品スクラップと混載保管され、実効的な規制が困難
今後の取組の基本方向性
  • ・ヤードには、鉛蓄電池等の有害性の高い物品と有害性の低い金属スクラップが混在しているため、(規制の)実効性を担保できる制度を検討すべき
  • ・既に条例で独自規制を行っている自治体の取組にも配慮すべき
  • ・規制方法としては、「計画変更命令付き届出制」や「帳簿記載義務」、「罰則」等の実効性ある制度的措置を検討すべき
  • ・ヤードで保管されている物品については、廃棄物該当性を総合的に判断し、有価物と認められない限りは廃棄物として扱うべき
  • ・有価物であっても、保管・分別される過程で環境負荷が生じる可能性があるため、ヤード全体を包括的に規制する仕組みを検討すべき
    • ►集積物の保管・処分に関する基準を設け、業として集積物の保管又は処分をする行為を規制対象としてはどうか
    • ►ただし、集積量が社会通念上少量である場合や、鉱石やリサイクル原料から金属を取り出したり、当該金属の純度を高めるための集積行為等に対して、過度な規制とならないよう留意してはどうか
  • ・廃鉛蓄電池等の有害性の高い物品は、ヤードにおいては解体を行わず、選り分けを行うのみにとどめ、生活環境保全上の配慮がなされた事業場でのみ解体や処分をさせる仕組みを検討すべき
  • ・国内で生じた有害性の高い物品(廃鉛蓄電池等)については、環境対策が確実に行われる国内での解体を優先させるとともに、有害性の高い物品の不適正輸出を未然に防止できるように、廃棄物の輸出に関する手続に準じた実効性のある制度を検討すべき
    • ►廃鉛蓄電池、廃リチウムイオン電池等の物品については、有害性に着目した保管・処分に関する基準を設け、これらを業として保管又は処分する者を規制対象としてはどうか
    • ►ヤードにおいては原則として、有害性の高い物品の保管に加え、「選り分け行為」を行うこととしてはどうか
    • ►生活環境保全上の配慮がなされた事業場においてのみ、「解体」、「精錬」、「中和」等を行うこととしてはどうか
スクラップヤード規制に関する論点のまとめ
  • ・委員から、スクラップヤード設置に関する手続きに関し、「都道府県等の事務負担をできるだけ増やさないための配慮は必要」「届出制にするのが妥当」という指摘が多数あり、環境省は「都道府県等の事務負担が小さくなる制度設計を考えたい」と回答していました。
  • ・その他に、環境省提示案に対する異論は出ませんでした。
  • (以下、筆者の私見)
  • ・スクラップヤードにおける火災が頻発しているため、次の廃棄物処理法改正では、ヤード規制を目的とした何らかの制度的措置の追加が行われる可能性が高いと思われます。
  • ・スクラップヤードへの単一の規制ではなく、保管する物の性状に応じた(有害性が高いかどうか等)きめ細かな規制が追加される可能性もあります。
  • ・都道府県等の事務負担を考えると、スクラップヤードを設置する場合には、「許可」ではなく「届出」対象とすることに落ち着くのではないかと思います。もっとも、「届出」の場合でも、都道府県等の負担は増えることは間違いありませんが・・・
第4回廃棄物処理制度小委員会 資料

※出典 第4回廃棄物処理制度小委員会 資料
⇒ https://www.env.go.jp/council/content/03recycle06/000310481.pdf

(つづく)
(2025年06月)

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