大栄環境グループ

JP / EN

「廃棄物処理法改正の動き」(第6回)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 廃棄物処理法改正に関する個別の論点の審議は、2025年4月25日に開催された「第4回 廃棄物処理制度小員会」で終了し、5月23日の「第5回 廃棄物処理制度小委員会」から「今後の廃棄物処理制度の検討に向けた論点整理」の審議が始まりました。
 「今後の廃棄物処理制度の検討に向けた論点整理」は、今後「パブリックコメント募集」の際のたたき台となり、最終的には「廃棄物処理制度小委員会報告書」となり、来年(2026年)の通常国会で審議される廃棄物処理法改正内容へと結実していく予定です。そのため、今後の小委員会では、「論点整理」の論調の整合性等、大局的な視点に基づく議論が進んでいくことになります。
 従来の廃棄物処理法改正の際には、今回の「廃棄物処理制度小委員会」と名称が少し異なるだけの「廃棄物処理制度専門委員会」が設置され、個別論点の審議がじっくり行われてきたところです。平成28年5月に始まった前回の「廃棄物処理制度専門委員会」では、個別の論点審議に5ヶ月間で合計6回の審議が行われたところですが、今回の「廃棄物処理制度小委員会」では、2ヶ月間で4回の個別論点審議の場が設けられましたので、審議期間で言うと、「5ヶ月間」から「2ヶ月間」へと大幅に短縮されたことになります。
 今回、このように審議期間が大幅に短縮された理由の一つには、2025年2月18日に開催された第1回目会合の段階から、環境省が「廃棄物・資源循環分野における現下の主な議題」として、「不適正ヤードへの対応」「処分期限後に覚知されたPCB廃棄物の適正処理の確保の仕組みの検討」「令和6年能登半島地震等における災害廃棄物対応について」の3点に絞って問題提起したことがあります。最初から環境省が論点を絞って示すという手法は、ここ最近の「廃棄物処理制度専門委員会」では見られないものでした。
 論点を最初から限定したことで、審議に費やす時間は大幅に削減でき、その分環境省も、法令条文の表現にじっくりと取組む時間を捻出できるようになります。これが、今回の「廃棄物処理制度小委員会」で初めて取り入れられた新機軸の大きなメリットと言えます。
 その一方で、従来の「廃棄物処理制度専門委員会」では必ず行われていた、委員からの廃棄物処理法制に関する自由な問題提起を受ける機会がありませんでした。その結果、環境省が提示した3つの論点以外には、せっかく参集した委員の具体的な知見を聞くことがかないませんでした。言うまでもなく、現在の廃棄物処理法が抱えている問題点は、「不適正ヤード」「PCB廃棄物」「災害廃棄物対応」の3つだけではなく、数多くの「法律の理念と現実との乖離」や「法規制が円滑に機能していない分野が現実にあるという喫緊の課題」を抱えています。
 もちろん、「不適正ヤード」「PCB廃棄物」「災害廃棄物対応」の3点も、現実的に対処すべき重要な課題であることは間違いありません。「この3つの課題をこの機会に一挙に解決する」という環境省の並々ならぬ決意は十分伝わりましたが、
  • ・「専ら再生利用の目的となる廃棄物」という、法令上は極めて抽象的な定義であるにもかかわらず、通知で「古紙」「くず鉄」「あきびん類」「古繊維」の4品目だけに限定している「専ら物」
  • ・通知で業許可不要と解釈されている「無償下取り回収」を本来の趣旨よりも拡大解釈した結果、法律違反の疑いが濃厚な取引実例
  • ・各地の一般廃棄物清掃工場で火災発生の原因となっている「リチウムイオン電池」
等、現実にはたくさんの早急に解決すべき問題が横たわっています。
 環境省が提示した3つの論点以外には議論すらされなかったことは、今回の「廃棄物処理制度小委員会」の小さくはない負の側面と言わざるを得ませんでした。

 以上のように、今回の「廃棄物処理制度小委員会」は、従来の審議会とは少し異なる方針で進められ、審議時間及び回数の大幅な短縮、すなわち議論の効率化に成功した一方で、現状の幅広い課題全般にフォーカスすることはできませんでした。もはやこうなってしまった以上は、「不適正ヤード」「PCB廃棄物」「災害廃棄物対応」の3点については、廃棄物処理法改正を恒久的な問題解決策としていただくしかありません。

 第5回と第6回の小委員会で審議されている「今後の廃棄物処理制度の検討に向けた論点整理」の詳細は、次号で解説していきます。

(つづく)
(2025年08月)

PAGE TOP