廃棄物処理法改正に向けた審議も大詰めとなり、2025年5月23日「第5回 廃棄物処理制度小委員会」及び同年6月24日「第6回 廃棄物処理制度小委員会」では、「今後の廃棄物処理制度の検討に向けた中間取りまとめ(案)」の審議が始まりました。
今回の廃棄物処理法改正の主眼は、本稿で既報のとおり、
ちなみに、前回の2017年に設置された「廃棄物処理制度専門委員会報告書」では、大きなテーマだけで
今回の廃棄物処理法改正の主眼は、本稿で既報のとおり、
- ・「不適正ヤード問題への対応」
- ・「PCB廃棄物に係る対応」
- ・「災害廃棄物への対応」
ちなみに、前回の2017年に設置された「廃棄物処理制度専門委員会報告書」では、大きなテーマだけで
- 1.「適正処理の更なる推進」
- 2.「健全な資源循環の推進」
- 3.「産業廃棄物の処理状況の透明性の向上」
- 4.「マニフェストの活用」
- 5.「廃棄物を排出する事業者の責任の徹底」
- 6.「廃棄物の不適正な取扱に対する対応の強化」
- 7.「廃棄物処理における有害物質管理の在り方」
- 8.「廃棄物の適正処理の更なる推進に関するその他の論点」
- 9.「廃棄物等の越境移動の適正化に向けた取組及び廃棄物等の健全な再生利用・排出抑制等の推進に向けた取組」
- 10.「優良な循環産業の更なる育成」
- 11.「廃棄物等の健全な再生利用・排出抑制等の推進に向けた取組」
- 12.「廃棄物処理分野における地球温暖化対策の強化」
- 13.「廃棄物処理法に基づく各種規制措置等の見直し」
- 14.「地方自治体の運用」
以下、「今後の廃棄物処理制度の検討に向けた中間取りまとめ(案)」の概要を取り上げていきます。
Ⅲ.不適正ヤード問題への対応
1.現行制度について
廃棄物でない有害物質含有機器(家電4品目+小型家電28品目)は、平成29年の廃棄物処理法改正で「有害使用済機器保管等届出制度」の対象とされた。
2.制度的措置の必要性
- ・有害使用済機器保管等届出制度の対象外となる雑品スクラップが、ヤードで不適正処理されることで、騒音・悪臭・土壌汚染・火災の原因となっている
- ・そのため、一部の自治体において、それらの物品の保管に関する条例が制定されている
- ・特に、廃鉛蓄電池や廃リチウムイオン電池については、鉛流出や火災の発生の他、不適正輸出しようとした事例が確認されている
- ・自治体による条例対応には限界があるため、多くの自治体が全国統一制度の創設を臨んでいる
3.今後の検討における方向性
- ・「廃棄物」または「有害使用済機器」に該当しない「雑品スクラップ」や「廃鉛蓄電池等」を対象とする全国統一制度の創設が必要
- ・不適正事業者の参入を防止するための許可制の導入
- ・不適正処理を行った事業者への取消規定等の実効性の高い措置
- ・廃鉛蓄電池等については、廃棄物処理法上の「廃棄物」の取扱に準じた対応が必要
- ・一方で、適正な事業者には過度な負担をかけない制度の検討が必要
検討事項
- ・廃鉛蓄電池等の「有害物質が含まれ、その不適正な保管・処理により生活環境保全上の支障を生じるおそれのあるもの」と、金属スクラップや雑品スクラップ等の「一定程度集積して保管・処理されることにより生活環境保全上の支障を生じるおそれのあるもの」を制度の対象とすべき
- ・対象物品をよく精査し、包括的に制度の網にかけられるような定義付けを検討すべき
- ・廃鉛蓄電池と、金属スクラップや雑品スクラップとでは物品の性質が異なることから、それぞれの性質に応じて、どのような制度を導入することが必要か検討すべき
- ・許可制、登録制、届出制が考えられるが、実効性の高さや、現場の事業者や自治体における実務面での手続の負担、条例の制定状況等を総合的に考慮の上、廃鉛蓄電池等と、金属スクラップや雑品スクラップ等とで、どのような手法が適当かそれぞれ検討すべき
- ・対象物品の保管以外の事業を本来の業務として行う事業者が、適切な環境保全対策の下、一時的な保管を行う場合等には過度な負担とならないよう十分配慮すべき
- ・トレーサビリティ確保のため、帳簿への記載の義務化
- ・不適正輸出防止のため、輸出には環境大臣の確認が必要とすべき
- ・罰則強化により、不適正処理を実効的に抑止
Ⅳ.PCB廃棄物に係る対応
1.現行制度について
1.現行制度について
- ・PCB廃棄物を保管する事業者には、保管や処分状況の届出と期限内の処分が義務づけられている
- ・高濃度PCB廃棄物は、JESCOが令和8年3月末までに処理終了
- ・低濃度PCB廃棄物は、保管事業者が令和9年3月末までに処分する義務
2.制度的措置の必要性
- ・高濃度PCB廃棄物は処理期限後も発見されることが見込まれるので、現行制度の見直しが必要
- ・低濃度PCB廃棄物も処理期限後に発生が見込まれるので、制度面の措置が必要
3.今後の検討における方向性
- ・高濃度PCB廃棄物の継続的処理体制確保
- ・低濃度PCB含有製品等の管理強化
検討事項
- ・高濃度PCB廃棄物の新たな処理体制の確保
- ・低濃度PCB含有製品及び同疑い製品に係る管理制度の創設
- ・建築物・設備にかかる低濃度PCB廃棄物の計画的な処理に係る措置
- ・事務の見直し
Ⅴ.災害廃棄物への対応
1.現行制度について
1.現行制度について
- ・平成27年廃棄物処理法等の改正で、平時の備えから大規模災害発生時の措置まで切れ目ない措置の拡充が行われた
2.制度的措置の必要性
- ・「発災時対応」と「平時の備えの対応」の双方が非常に重要だが、自治体の人員・ノウハウ不足が課題であり、平時・発災時の自治体への適切な支援を行う仕組みが不可欠
- ・市町村の災害廃棄物処理計画策定率は86%に留まっている
- ・民間処分場を活用する必要があるが、災害廃棄物を受入れるインセンティブが不足している
3.今後の検討における方向性
- ・災害廃棄物処理計画策定・改定や民間事業者との協定締結を全国横断的に支援
- ・市町村の災害廃棄物処理計画や自治体と民間事業者・団体等との災害支援協定を制度化する必要
検討事項
- ・公費解体・災害廃棄物処理を横断的に調整支援する専門支援機能の規定整備
- ・一般廃棄物処理計画・災害支援協定に基づく災害廃棄物処理に係る特例措置等の整備
- ・廃棄物最終処分場での災害廃棄物の受入容量確保に係る特例制度の創設
以上のように、各テーマごとに比較的細かく問題点と検討方針が列挙されていますが、筆者個人の印象では、「Ⅲ.不適正ヤード問題への対応」の記述が最も具体的であるため、廃棄物処理法改正の大部分を占めるものと予想しています。
排出事業者の方の場合は、「Ⅳ.PCB廃棄物に係る対応」で具体的な検討が予定されている、PCB廃棄物に関する新しい事務手続きにも注目が必要です。
(つづく)
(2025年09月)