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「廃棄物処理法施行規則改正」(第1回 委託契約書の法定記載事項の追加)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今号から、施行間近となっている廃棄物処理法施行規則改正内容について解説していきます。
 第1回目は「委託契約書の法定記載事項の追加」についてです。
 この改正は、2025年4月22日に公布済みで、施行は2026年1月1日からです。すなわち、来年早々から改正内容が施行されますので、早めの準備と対策が必要となっています。

 今号で解説する「委託契約書の法定記載事項の追加」は、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」に基づく届出を行っている排出事業者のみが対象となりますので、先にPRTR法の対象化学物質と対象事業者の整理をしておきます。

 PRTR法は、「人や生態系への有害性(オゾン層破壊性を含む) があり、環境中に継続して広く存在する(暴露可能性がある)と認められる物質」として、2025年9月現在で515物質が「第一種指定化学物質」として指定されています。
※「第一種指定化学物質」の詳細は、経済産業省 「PRTR制度対象化学物質」をご参照ください。
※経済産業省 「PRTR制度対象化学物質」  https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/prtr/2.html

 そして、「第一種指定化学物質を製造、使用その他業として取り扱う等により、事業活動に伴い当該化学物質を環境に排出されると見込まれる事業者」のうち、
  • ・「金属鉱業」その他の24業種に該当し
  • ・「常用雇用者数」「第一種指定化学物質」の「製造量」や「使用量」等が一定量以上ある
  • ・または、鉱山保安法上の関連施設、下水道終末処理施設、一般廃棄物処理施設、産業廃棄物処理施設、ダイオキシン類対策特別措置法上の特定施設を有している
 事業者が「第一種指定化学物質等取扱事業者」となります。
※対象となる全24業種の詳細は、経済産業省「PRTR制度 対象事業者」をご参照ください。
※経済産業省「PRTR制度 対象事業者」  https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/prtr/3.html
改正の概要
 「委託契約に含まれるべき事項」に関する廃棄物処理法施行規則第8条の4の2に、下記の「へ」の条項が追加されます。※従前の「へ その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項」は、施行後は「ト その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項」へとスライドします。
廃棄物処理法施行規則第8条の4の2(委託契約に含まれるべき事項)
 令第6条の2第四号ヘ(令第6条の12第四号の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の環境省令で定める事項は、次のとおりとする。
一~五 (略)
六 委託者の有する委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な次に掲げる事項に関する情報
 イ~ホ (略)
(ここから追加された条文)
  •  ヘ 委託者が特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律第2条第5項に規定する第一種指定化学物質等取扱事業者である場合であつて、かつ、委託する産業廃棄物に同条第二項に規定する第一種指定化学物質(同法第5条第1項の規定により第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質に限る。)が含まれ、又は付着している場合には、その旨並びに当該産業廃棄物に含まれ、又は付着している当該物質の名称及び量又は割合
  • (ここまで)
  •  ト その他当該産業廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項
 このままでは読みにくいので、上記の「へ」の部分を、法律名称を俗称にし、要点を箇条書きにまとめます。
  • 1. 委託者がPRTR法第2条第5項の「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当し、
  • 2. 委託する産業廃棄物にPRTR法第2条第2項の「第一種指定化学物質(同法第5条第1項で第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質に限る。)」が含まれ、または付着している場合には、
    A) 「産業廃棄物に第一種指定化学物質が含有、または付着している旨」
    B) 「産業廃棄物に含有、または付着している当該物質の名称及び量または割合」
を産業廃棄物処理委託契約書へ記載することが、今回の施行規則改正に関係する委託者の義務となります。
 上記の「1」は「今回の廃棄物処理法施行規則改正の対象となる排出事業者(委託者)の条件」、「2」は「委託契約書に記載が必要な委託物の内容」を規定しています。
 「2」の「委託契約書に記載が必要な委託物の内容」は「A)」「B)」の2つで、「A)」は「第一種指定化学物質が含有、または付着している旨」を記載するだけですので、何ら難しいところはありません。実務的には、「B)」の「産業廃棄物に含有、または付着している第一種指定化学物質の名称」、「産業廃棄物に含有、または付着している第一種指定化学物質の量または割合」に戸惑う場面が増えるものと思われます。その理由については、次号で具体例を元に解説いたします。

(つづく)
(2025年10月)

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