前号では、「PRTR法対象事業者が対象となる委託契約書の記載事項の追加」に関する廃棄物処理法施行規則改正の概要について解説しました。
改正施行規則の施行は2026年1月1日からですが、既に締結済みの委託契約については、施行規則改正を公布した「令和7年4月22日環境省令第15号」の附則で、
しかし、2026年1月1日以降に契約更新をする際には、PRTR法対象事業者の場合は、今回解説する事項を産業廃棄物処理委託契約書に記載する必要がありますので、記載ミス(=委託基準違反が成立)を放置しないようにご注意ください。
改正施行規則の施行は2026年1月1日からですが、既に締結済みの委託契約については、施行規則改正を公布した「令和7年4月22日環境省令第15号」の附則で、
附則 第2条
この省令の施行の際現に締結されている廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条の二第四号に掲げる委託契約に対するこの省令による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第八条の四の二の規定の適用については、当該契約の更新までの間は、なお従前の例による。
と定められていますので、次に契約更新するまでの間は、現状の記載のままでも問題ありません。この省令の施行の際現に締結されている廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条の二第四号に掲げる委託契約に対するこの省令による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第八条の四の二の規定の適用については、当該契約の更新までの間は、なお従前の例による。
しかし、2026年1月1日以降に契約更新をする際には、PRTR法対象事業者の場合は、今回解説する事項を産業廃棄物処理委託契約書に記載する必要がありますので、記載ミス(=委託基準違反が成立)を放置しないようにご注意ください。
今号は、具体例を元に、PRTR法対象事業者が委託契約書にどのような記載をするべきかを検討します。まずは、前号でも触れた新たに追加された記載事項の要点を再掲しておきます。
- 1. 委託者がPRTR法第2条第5項の「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当し、
- 2. 委託する産業廃棄物にPRTR法第2条第2項の「第一種指定化学物質(同法第5条第1項で第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質に限る。)」が含まれ、または付着している場合には、
- A) 「産業廃棄物に第一種指定化学物質が含有、または付着している旨」
- B) 「産業廃棄物に含有、または付着している当該物質の名称及び量または割合」
具体例1
今回の廃棄物処理法施行規則改正は、「PRTR法に基づき届出をした第一種指定化学物質」のみ産業廃棄物処理委託契約書へ追記が必要ですので、PRTR法に基づく届出対象ではない第一種指定化学物質については、産業廃棄物処理委託契約書へ追記する必要はありません。そのため、ご質問いただいた「エチルベンゼン」については、その含有状況等を産業廃棄物処理委託契約書に追記する必要はありません。
もちろん、排出事業者が把握している範囲で、「エチルベンゼン」の含有状況等に関して情報提供すること自体は問題ありませんし、リスクコミュニケーションとしてはその方が望ましいと言えます。
具体例2
この場合は、
「2」の「委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質が含まれ、または付着している」に該当しませんので、産業廃棄物処理委託契約書にニッケルの含有状況や含有量等を追加記載する必要はありません。
「一般機械器具製造業」で、PRTR法の対象物質としては「トルエン」の1種類のみが届出対象である企業で、「エチルベンゼン」を含んだ塗料を産業廃棄物として処理委託する場合、今回の廃棄物処理法施行規則改正により、委託契約書に「エチルベンゼン」の含有状況等を追記する必要があるのか?
「トルエン」のみがPRTR法の届出対象で、「エチルベンゼン」は届出対象でないということは、「エチルベンゼン」については、年間製造量と年間使用量を合計した「年間取扱量」が一定の基準値以下と思われます。今回の廃棄物処理法施行規則改正は、「PRTR法に基づき届出をした第一種指定化学物質」のみ産業廃棄物処理委託契約書へ追記が必要ですので、PRTR法に基づく届出対象ではない第一種指定化学物質については、産業廃棄物処理委託契約書へ追記する必要はありません。そのため、ご質問いただいた「エチルベンゼン」については、その含有状況等を産業廃棄物処理委託契約書に追記する必要はありません。
もちろん、排出事業者が把握している範囲で、「エチルベンゼン」の含有状況等に関して情報提供すること自体は問題ありませんし、リスクコミュニケーションとしてはその方が望ましいと言えます。
具体例2
「一般機械器具製造業」で、PRTR法の対象物質としては「ニッケル」のみが届出対象であるが、それは製品として市場に出荷されるため、産業廃棄物としてのニッケル排出量は「0」という場合でも、委託契約書に「ニッケル」の含有状況等を追記する必要があるのか?
PRTR法上に基づき「ニッケル」のみを届出ているが、「ニッケル」は製品原材料として全量が使用されるため、排出事業者として排出する産業廃棄物には「ニッケルがまったく含まれない」という状況です。そのため、産業廃棄物への「ニッケル」含有量は「0」となります。この場合は、
- 1. 委託者がPRTR法第2条第5項の「第一種指定化学物質等取扱事業者」に該当し、
- 2. 委託する産業廃棄物にPRTR法第2条第2項の「第一種指定化学物質(同法第5条第1項で第一種指定化学物質等取扱事業者が排出量及び移動量を把握しなければならない第一種指定化学物質に限る。)」が含まれ、または付着している場合には、
- A) 「産業廃棄物に第一種指定化学物質が含有、または付着している旨」
- B) 「産業廃棄物に含有、または付着している当該物質の名称及び量または割合」
(つづく)
(2025年11月)


