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「廃棄物処理法施行規則改正」(第3回 委託契約書の法定記載事項の追加)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 今号は、「PRTR法対象事業者が対象となる委託契約書の記載事項をいつ、そしてどのように追記すべきか」について解説します。
 前号では、「既に締結済みの委託契約については、次に契約更新するまでの間は、現状の記載のままでも問題ありません」と、結論だけをご案内しました。
 「次の契約更新までは現状のままで問題無し」の根拠は、施行規則改正を公布した「令和7年4月22日環境省令第15号」の附則で、
附則 第2条
 この省令の施行の際現に締結されている廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条の二第四号に掲げる委託契約に対するこの省令による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第八条の四の二の規定の適用については、当該契約の更新までの間は、なお従前の例による。
と定められているためでした。

 まずは「どのように」から始めます。
 PRTR法対象事業者の対応方針は2つあります。
 第一に、改めてPRTR法届出対象物質に関する情報を網羅した産業廃棄物処理委託契約書を作成し、産業廃棄物処理業者と締結をする方法。
 この方法が確実であることは間違いありませんが、産業廃棄物に含まれる化学物質の種類や量を追記するためだけに、一から契約行為をやり直すのは面倒であり、印紙税等のコストの問題もあります。
 多くの排出事業者が選択するであろうと思われる現実的な対応策は、「従前の産業廃棄物処理委託契約書への追記」となります。具体的には、「追記する内容を覚書、あるいは変更契約書で合意」という方法が考えられます。
 あるいは、「産業廃棄物の適正処理のために必要な情報提供」として、廃棄物データシート(WDS)を産業廃棄物処理委託契約書に添付している場合は、そのPRTR法関連の追記をした廃棄物データシートに差し替える(ことに排出事業者と産業廃棄物処理業者の双方が合意をする)ことで済みます。
 ちなみに、廃棄物データシートの記載例を示した「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」は2025年10月に第2版から第3版に改訂され、旧来の廃棄物データシートの様式が、PRTR法届出情報その他の内容に関する新しい様式に改められています。
※「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」https://www.env.go.jp/recycle/misc/wds/index.html

「廃棄物処理法施行規則改正」(第3回 委託契約書の法定記載事項の追加)画像1

※出典「WDS様式(第3版) 」(環境省)(https://www.env.go.jp/content/000347663.xlsx

 次の問題は「追記をいつまでに行う必要があるか?」です。
 先述したとおり、令和7年4月22日環境省令第15号の「附則」第2条では、
附則 第2条
 この省令の施行の際現に締結されている廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条の二第四号に掲げる委託契約に対するこの省令による改正後の廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第八条の四の二の規定の適用については、当該契約の更新までの間は、なお従前の例による。
と定められています。

 そのため、従前の産業廃棄物処理委託契約書の有効期間が満了するまでは、産業廃棄物処理委託契約書にPRTR法関連の追記をする義務はありませんが、「(R8.1.1時点で締結している)契約の有効期間満了」と共に、すなわち「契約を更新する日」から、PRTR法関連の追記をする義務が発生します。

具体例
 現契約の有効期間 「令和6年12月1日から令和7年11月30日」で
 令和7年12月1日に自動更新されるため
 その後の契約の有効期間は「令和7年12月1日から令和8年11月30日」となるケース

「廃棄物処理法施行規則改正」(第3回 委託契約書の法定記載事項の追加)画像2

 上記のケースの場合、令和8年1月1日に改正廃棄物処理法施行規則が施行されますが、環境省令第15号「附則」第2条に基づき、「この省令の施行の際現に締結されている廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条の二第四号に掲げる委託契約」であるため、令和8年11月30日までは「従前の(契約)例(のまま)」、すなわちPRTR法関連の情報を追記する義務はありません。

 しかし、改正廃棄物処理法施行規則施行後初の契約更新となる「令和8年12月1日以降」は、環境省令第15号「附則」第2条の猶予規定が適用されませんので、PRTR法関連の情報の追記が必要となります。

(つづく)
(2025年12月)

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