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「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」について(その1)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 2025年から2026年にかけて廃棄物処理法改正の動きが早まったため、前号まではその概要を集中的に解説してきました。その過程で、「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」の改訂について簡単に触れたことが数回あります。
※「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」(環境省)
https://www.env.go.jp/content/000347660.pdf

 「ガイドライン」ではありますが、「産業廃棄物の適正処理のために行う情報提供」は、排出事業者の責任の一端であることに言及するほか、第2版以前よりも実務的な記述が増えているため、排出事業者にとってはより重要性が増した面が多々あります。
 そこで今号から、改めて「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」を取り上げ、排出事業者が留意しておかなければならない点や、望ましいWDS(廃棄物データシート)の書き方等について解説をしていきます。

 第1回目は、「そもそもなぜ2025年に第3版の改訂が行われたのか?」についてです。

 ガイドラインの最初のページは、「本ガイドラインの狙いと廃棄物データシート(WDS)の活用について」という説明が書かれており、そこには次のような記述があります。
 排出事業者は、産業廃棄物の処理の委託に際して、委託する産業廃棄物の適正な処理のために、廃棄物の性状や取り扱う際の注意事項等の情報を処理業者へ提供しなければならないことが廃棄物処理法で定められています。 情報提供は排出事業者の義務であり、排出事業者から処理業者に必要にして十分な情報伝達が行われない場合には、処理業者において安全性の確保や無害化、法令遵守が困難となるほか、委託基準違反となる可能性があります。過去には情報提供が不十分であったことから水道水質の汚濁が発生しており、場合によっては生活環境保全上の支障を招く恐れもあります。
 WDSは、排出事業者が処理業者に情報提供すべき項目を記載できるツールとして作成したものです。必要な情報が処理業者に伝達されることが重要であるため、記載にあたっては、形式的な書類手続きとならないよう、排出事業者と処理業者双方でよくコミュニケーションを取り、両者で記載内容を確認の上、作成をお願いします
 『排出事業者から処理業者に必要にして十分な情報伝達が行われない場合には、処理業者において安全性の確保や無害化、法令遵守が困難となるほか、委託基準違反となる可能性がある』と、第2版時よりもかなり踏み込んだ表現が盛り込まれています。
 これを受けて、「第1章総則」で、「ガイドライン第3版への改訂の経緯」が次のように記述されています。
 平成29年2月に取りまとめられた「廃棄物処理制度の見直しの方向性(中央環境審議会意見具申)」において、廃棄物処理の委託時における情報伝達の一層の推進が課題として挙げられ、廃棄物の処理過程における安全性及び適正処理の確保の観点から、危険・有害物質を規制する関連法令で規制されている物質を含む廃棄物に対するより具体的な情報提供の義務付けが、見直しの方向性として示された。同年10月に設置された「廃棄物処理制度における有害物質管理のあり方に係る検討会」のとりまとめを踏まえ、環境省において令和7年4月に省令を改正し、委託契約に含まれるべき事項に第一種指定化学物質の名称等を追加するとともに、第2版発刊以降の新たな施策動向・知見の反映・周知を図り、WDSの認知・活用促進に向けた利便性を向上させることを目的として、主に以下の3点に係る改訂を行った。
①新たな制度的措置を踏まえた伝達されるべき情報に係る説明の追加・更新
②新たな制度的措置等を踏まえたWDS様式の見直し
③事故事例等に関する新たな知見の反映
 本コラムでも既に解説済みの「PRTR法届出物質の産業廃棄物処理委託契約書への記載義務化」が、ガイドライン第3版への改訂を行った主要なきっかけであったことがわかります。
 その他、「本ガイドラインの狙いと廃棄物データシート(WDS)の活用について」には、
◎双方向コミュニケーションの意義
 排出事業者から処理業者に多量の情報を一方的に提供しても、逆に処理業者から排出事業者に含有する可能性がある物質も含めたすべての情報の提供を求めても、情報量が膨大なものとなり、さらに情報提供がお互いに負担となるため、処理が安全かつ適正に実施されるとは限りません。
 排出事業者は委託する廃棄物に含有されている主な物質等や当該廃棄物の発生工程等を処理業者に伝え、処理業者は適正に処理するために不足と思われる情報を排出事業者に問い合わせる等、排出事業者と処理業者間で相互にコミュニケーションをとりながら情報の精度を高め、情報共有することが効果的・効率的です。
と、第2版時には言及されていなかった、排出事業者と処理業者間の双方コミュニケーションの重要性についても、かなり踏み込んだ説明がされていることに留意する必要があるでしょう。

(2026年03月)

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