2026年4月10日、環境省は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の一部を改正する法律案」の閣議決定を発表しました。https://www.env.go.jp/press/press_04100.html
前号まで「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」を解説してきましたが、廃棄物処理法に関して重要な動きが始まりましたので、今回は内容を変更してお届けします。
廃棄物処理法、制定半世紀後に迎える大きな"構造転換"―「廃棄物であるか否か」を超えた規制へ―
今回の改正案の最大の特徴は、廃棄物処理法制定以来初めて、廃棄物処理業と同水準の許可制を「廃棄物ではない物」の取扱事業に導入する点にあります。
廃棄物処理法はその名のとおり「廃棄物」を規制対象とする法律であり、「廃棄物ではない」有価物には原則として適用がありません。スクラップヤードが扱う金属スクラップ等はその典型例です。
ただし2018年施行の改正で、使用済電気電子機器(有害使用済機器)に限り届出制が導入され、有価物への規制という例外が初めて設けられました。今回の改正はその例外を廃止した上で、より広範な使用済金属・プラスチック物品全般を対象とする許可制へと大幅に強化・再編するものです。「廃棄物ではないから廃棄物処理法は関係ない」という整理が、今後はさらに広い範囲で通用しなくなります。
これにより、廃棄物処理法の条文構造そのものが複雑化するため、「従来どおり問題ない」との認識のまま事業を継続した場合、無許可営業や基準違反に該当するリスクが生じる点に注意が必要です。特に、これまで「有価物」として保管・売買していたスクラップや、ヤードでの保管・再生といった行為が、新たに許可対象とされる予定です。
- 1.使用済金属・プラスチック物品の保管・再生業(スクラップヤード)への許可制の導入
- 2.能登半島地震の教訓を踏まえた災害廃棄物処理体制の強化
スクラップヤード規制の概要
全国の自治体アンケートで4,000件超のスクラップヤード事業場が確認されており、騒音・悪臭・火災・水質汚染のほか、不適正な金属資源の海外流出も問題視されてきました。現行法では廃棄物に該当しないために規制の手が及ばず、今回の改正でその空白を埋める形となります。
改正案は廃棄物処理法第2条に新たな定義規定を追加し、「要適正保管物品の保管業(譲渡目的のものに限る)」と「要適正再生物品の再生業」の2類型について都道府県知事の許可制を導入します(新設・第4章の2)。
許可の有効期間は「5年を下らない政令で定める期間」で、廃棄物処理業と同様の更新制が採用されます。
また、許可基準・保管基準・再生基準もそれぞれ整備され、帳簿の備付け・記載・保存義務も課されます。つまり規制の枠組みとしては、廃棄物処理業の許可制度とほぼ同水準の管理が求められることになります。
無許可で事業を行った場合には、廃棄物処理法第25条に新設される罰則が適用され、「5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科」となります。これは現行の無許可営業と同水準の重い罰則です。
現時点では、排出事業者がスクラップヤード事業者と取引する際に、排出事業者に対して産業廃棄物委託基準のような義務が課される予定はありません。しかし、先述したとおり、無許可でスクラップヤード事業を行った者には廃棄物処理法でもっとも重い罰則が科されることになりますので、スクラップを売却する排出事業者の場合は、今後の法令改正の動きを注視する必要があります。
災害廃棄物処理体制の強化
能登半島地震の教訓として、仮置場の事前計画不足・民間処分場の活用停滞・被災自治体の人員不足が課題として改めて認識されました。これらを踏まえ、改正案では地方公共団体と民間事業者との協定締結制度の創設、災害時に活用できる最終処分場設置者の指定制度(第9条の3の4)の新設、被災自治体への専門人材派遣の仕組みの整備などが盛り込まれています。
処理業者にとっては、自治体との協定の相手方として平時から関与する機会が生まれる可能性があります。
また、排出事業者の立場からも、大規模災害時に廃棄物の受入先・処理体制がどう確保されるかに直結する話であり、自社の事業継続計画(BCP)の観点からも注目すべき改正です。
今後のスケジュール
・・・災害廃棄物対策関連: 公布日から3か月以内に施行予定。
・・・スクラップヤード規制: 公布日から2年6か月以内に施行予定。
今回の改正は、従来の「廃棄物かどうか」という判断基準を越えた複雑な内容となっています。施設基準の詳細等は今後の政省令で順次明らかになるため、引き続き注視が必要です。
当初予定していたWDS(廃棄物データシート)の実務解説については、次号以降で改めてお届けします。
(2026年05月)


