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「廃棄物情報の提供に関するガイドライン(第3版)」について(その4)

Author

行政書士 尾上 雅典氏
(エース環境法務事務所 代表)

 前回は、望ましいWDS(廃棄物データシート)の書き方について、実務の視点から解説しました。
 今回は、「委託契約書とWDSの一体的運用」について解説します。

委託契約書とWDSは「セット」である
 廃棄物処理委託契約書とWDSは、別々の書類として作成・管理されることが多いのが実情です。契約書は法務部門、WDSは環境部門、といった具合に担当が分かれているケースも珍しくありません。
 しかし、廃棄物処理法の仕組みを整理すると、契約書とWDSは一体的に運用すべき書類です。
 産業廃棄物処理委託契約書の法的根拠は廃棄物処理法第12条第6項ですが、「委託者の有する委託した産業廃棄物の適正な処理のために必要な次に掲げる事項に関する情報」が契約書の法定記載事項として定められています。WDSはまさにその「産業廃棄物の適正な処理のために必要な情報」を具体化するツールです。
 つまり、契約書の正確性はWDSの内容に直結し、反対にWDSの内容が契約書に反映されていなければ、委託者としての責任を果たしたことになりません。

契約書とWDSの「ずれ」が引き起こす問題
 契約書とWDSの内容がずれている場合に、実務上どのような問題が起きるのかについて、典型的なケースを三つ挙げます。
  • ケース1
     契約書の廃棄物の種類は「廃油」のみと記載されているが、WDSには「廃油・廃液(混合)」と記載されているため、処理業者は、廃液部分が契約の範囲内かどうか判断できない。
  • ケース2
     引火性がある産業廃棄物の処理委託をしているのに、WDSの取り扱い注意事項欄には引火性に関する記載がないため、処理業者は運搬・保管時にどの程度の注意が必要か判断できない。
  • ケース3
     契約書は数年前に更新されているが、WDSは当初作成時の内容のままで、原材料や発生工程の変更が反映されていない。万一事故が起きた場合に、廃棄物の性状と実際の内容との乖離が問題になる。
 いずれのケースも、契約書とWDSを別々の書類として管理していることから生まれる弊害です。
契約書に盛り込むべきWDS関連事項
 廃棄物処理委託契約書に盛り込むべき法定記載事項のうち、WDSに直接関わる主な項目は次のとおりです。
  • 廃棄物の種類および性状:契約書に記載する「種類」「性状」は、WDSの内容と矛盾なく対応している必要があります。
  • PRTR法第一種指定化学物質の名称:令和7年の廃棄物処理法施行規則改正により、契約書に記載が義務付けられた項目です。PRTR法対象事業者で、委託する産業廃棄物に第一種指定化学物質が含まれる場合は、契約書かWDSにその化学物質名を必ず記載する必要があります。
契約書とWDSを「生きた書類」として維持するために
 契約書にWDSを結び付ける方法としては、WDSを契約書の別添として綴じ込む方法と、契約書本文中に文書番号で参照させる方法がありますが、いずれの方法でも、後から「どの版のWDSが契約書と対応していたか」を証明できる状態にしておくことが重要です。
 そのために実務上必要な確認ポイントは、次の二点です。
  • • WDSに版番号または更新日を明記する:WDSが更新されるたびに版管理を行い、どの時点の内容かを特定できるようにしておく。
  • • WDS更新時に契約書との整合確認を行う仕組みを作る:WDSの内容が変わった場合に、契約書の記載と食い違いが生じていないかを確認する手順を社内フローに組み込んでおく。

 契約書とWDSのどちらかだけが更新されて片方が放置されるという状態が最も危険です。両書類を常にセットで見直す運用習慣を作ることが、情報提供の実質を担保することにつながります。

契約書更新時にWDSも必ず見直す
 契約書の更新は周期的に行われることが多いですが、その際にWDSの見直しもセットで行うことが望ましいです。逆に、WDSの内容変更を行う場合も、契約書への反映が必要かどうかを判断する必要があると言えます。
 具体的には、下記のいずれかの事情が発生した時に、契約書とWDSの両方を確認することをお勧めします。
  • • 契約書の期間満了・更新時
  • • 原材料・製造工程の変更時
  • • 委託する廃棄物の種類増減時
  • • 廃棄物の出荷量の大幅変動時

(2026年07月)

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