全国の工場や事業所を訪問していると、現在でもPCB(ポリ塩化ビフェニル)が見つかるケースに遭遇することがあります。
PCBは、かつてカネミ油症事件の原因となるなど、人体に極めて有害な化学物質であり、国際的にもその製造・使用の廃絶と適正な処理が求められ、わが国においても、PCB廃棄物特措法(正式名称「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」)の下、これまで処分が進められてきました。
多くの企業も、同法に基づき、事業所内にPCBが無いかどうかを調べ、発見されればその処理を進めてきましたが、それでもいまだに発見されている場面を見ると、かつてPCBが全国各地で活発に利用されてきたことを改めて実感せずにはいられません。
令和8年6月19日、本法の改正法が公布されました。施行は、主に令和9年4月1日となります。
改正法では、これまでの高濃度PCB廃棄物処分事業が峠を越え、今後は散発的に発見される高濃度PCB廃棄物の処分方法を定めるとともに、使用中の低濃度PCB使用製品の適正廃棄の方法などが定められました。
改正法の概要は、次の図表の通りです。
改正PCB廃棄物特措法の概要
改正の趣旨
|
||
| 1 | 低濃度PCB使用製品の届出義務 |
|
| 2 | 高濃度PCB廃棄物の処分義務 |
|
| 3 | その他 |
|
|
〇公布日等:令和8年6月19日(法律第44号) 〇施行日:一部を除き、令和9年4月1日 |
||
一般の事業者から見た改正法のポイントは2つあります。
一つは、低濃度PCB使用製品に関する規制です。
低濃度PCB使用製品とは、PCBの製造が禁止された昭和47年(1972年)以降に製造工程などで非意図的にPCBが混入した絶縁油等を使用した製品を指します。
全国には、低濃度PCB使用製品のうち、変圧器、コンデンサーなどが約39,400台あることが把握され(令和5年度末)、実際の数はこれを上回ると見られています。
これまでPCB廃棄物の処分期限について定められており、低濃度PCB廃棄物の処分期限は令和9年3月31日となっています。ところが、これはあくまでも「廃棄物」の処分期限であり、処分期限後の低濃度PCB使用製品の取扱いがはっきりしていませんでした。
そこで、改正法では、まず、低濃度PCB使用製品の所有者に対して、都道府県知事への届出義務を課しました。届出事項には、対象製品の使用状況、使用場所、使用終了の見込みなどがあります。
届出事項に変更が出た場合も、軽微なものを除き変更届が必要となります。
また、低濃度PCB使用製品を特定し、PCBの飛散・漏えい等がないような管理を講じるために管理基準を定め、その遵守も求めることになりました。管理基準の具体的な内容については、改正法の施行までに政令で定められます。
なお、電気事業法の対象となる電気工作物(政令で定めるもの)については、PCB廃棄物特措法ではなく、電気事業法の適用を受けることになります。
さらに、低濃度PCB使用製品の使用を終了した者又は保管する廃棄物が低濃度PCB廃棄物と判明した者に対しても、使用終了日又は判明日の翌月末までの都道府県知事への届出も義務付けました。
その上で、使用終了日から又は判明日から起算して、5年以内で政令で定める日までに低濃度PCB廃棄物を処分しなければなりません。
もう一つは、高濃度PCB廃棄物の処分に関する規制です。
保管する廃棄物が高濃度PCB廃棄物と判明した場合、低濃度PCB廃棄物と同様に、都道府県知事に届け出るとともに、5年以内で政令で定める日までに処分しなければならないことを定めました。
このように、改正法では令和9年4月以降の新たな規制の枠組みを定め、これまでの一律の処分期限を定めた規制から、新たに発見・発生するPCB廃棄物について一定期間内の処分を求める規制へと移行します。
これまでの一律の処分期間内の処分義務付けの規制が終わり、あたかもPCB問題が過去のもののように捉える事業者もいますが、今後も発生が見込まれているからこそ、今回の改正が行われたわけです。
「過去に調査したから、今後PCBが見つかるわけがない」と思うよりも、「もしかしたら見つかるかもしれない」と思い、発見される可能性があることを前提にした社内の体制を組んでおくことが必要でしょう。
◎「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法及び中間貯蔵・環境安全事業株式会社法の一部を改正する法律案」の閣議決定について(環境省)
⇒ https://www.env.go.jp/press/press_04131.html
(2026年09月)


